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量子暗号通信の実証実験で宇宙と地上を光通信で結ぶ–ISS「きぼう」を活用
2023.09.06 12:22
Space BD(東京都中央区)は9月5日、総務省が手掛ける研究開発案件の委託先の一機関であるスカパーJSATを通じ、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」の船外プラットフォーム利活用サービスを提供したと発表した。
総務省が委託するスカパーJSATなどは、同サービスを活用した「衛星通信における量子暗号技術の研究開発」に使用される光通信用装置の実証実験に取り組んでいる。
米Northrop Grummanのロケット「Antares」で8月に打ち上げられた光通信装置は、「きぼう」に設置されている「中型曝露実験アダプター(IVA-replaceable Small Exposed Experiment Platform:i-SEEP)」に設置。地上の光通信局と高度約400kmを周回しているISSの光通信装置で光通信を実証する計画となっている。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発したi-SEEPは、実験に必要な電力や通信などのリソースをISSから直接供給が受けられるのが特徴。人工衛星による実験と比べて、迅速、安価、低リスクでの実験が可能だという。
JAXAからの打ち上げ機会や「きぼう」の船外利用枠の確保に加え、同装置がISS自体やISS軌道上のクルーに対して安全であることを評価する安全審査、i-SEEPのインターフェース要求に適合していることを評価する適合性審査を経ている。
軌道上と地上の間で確実に運用できるようにするため、運用準備などを関係各社の要望に応じてカスタマイズしているという。
サービスの運用では、JAXAが開発した外部運用クラウドを活用。開発者は、事前に許可されたJAXAの敷地外からISSに設置された実験装置と通信でき、Space BDが窓口となりサポートすることで、より効率的で手軽に軌道上で実証できるようになると説明する。
プロジェクトでは、外部運用クラウドを用いた新規の通信方法が必要となったこともあり、開発者、JAXA、米航空宇宙局(NASA)との間に立ってSpace BDが調整。ISS、地上のネットワークを模擬したNASA試験設備に対し、実験装置模擬品を持ち込んで試験している。