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ISS「きぼう」の民間利用を進める宇宙商社Space BD–宇宙開発を支える中小企業の技術力

2021.12.06 15:45

田中好伸(編集部)

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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は国際宇宙ステーション(ISS)を構成する日本実験棟「きぼう」の民間への開放を進めている。

 きぼうは日本にとって初めての地球低軌道(LEO)の研究所であり、ISSでも最大の実験棟。きぼうには、「中型曝露実験アダプター(IVA-replaceable Small Exposed Experiment Platform:i-SEEP)」と呼ばれる装置が2016年に取り付けられ、運用されている。

 i-SEEPは、与圧されていない、宇宙空間に直接さらされた曝露環境を活用できる実験装置であり、利用できる機会を増やすとともに、打ち上げる前のプロセスを定型化することで、より使いやすくするための“プラットフォーム化”を狙っている。i-SEEPは、きぼうだけに搭載されているロボットアームやエアロックを活用できることが強みとされている。

 そのi-SEEPには、曝露環境下でさまざまな機器の技術実証が可能な装置が複数搭載されているが、「小型簡易曝露実験装置(Exposed Experiment Bracket Attached on i-SEEP:ExBAS)」もその一つだ。このExBASは、i-SEEPの民間への開放策として生まれたものだ。i-SEEPの民間利用事業者として2019年3月に選ばれたのが、「宇宙商社」を自称するSpace BD(東京都中央区)である。このSpace BDとJAXAが2020年から共同で開発してきたのが、ExBASだ。

きぼうに搭載されるExBAS(出典:Space BD)
きぼうに搭載されるExBAS(出典:Space BD)

 Space BDは、研究用の素材のほか写真やイラストなどの対象品(サンプル)をExBASに取り付けて宇宙空間に曝露させた後に地球に戻して回収する「スペースデリバリープロジェクト~RETURN to EARTH~」を8月に開始した。プロジェクトでは、日本国内の学術機関の研究活用が主目的だが、教育機関や民間企業を含めて10組が参加。2021年度内にISSへの補給船に搭載されて打ち上げられ、約半年間曝露されたサンプルはISS内部に回収した後、2022年6月に補給船で地球に帰還する予定となっている。

「こんなスピードで決定していいのか?」

Space BD 代表取締役社長 永崎将利氏
Space BD 代表取締役社長 永崎将利氏

 10月に開かれた、ExBASに搭載するサンプルをJAXAに引き渡したことを報告する会でSpace BD代表取締役社長の永崎将利氏は今回のプロジェクトについて「世界的にみてもユニーク」と表現。同社の従業員40人中3分の1がエンジニアであり、今回のプロジェクトでも「エンジニアが(プロジェクトの参加する10組の)お客さんと一緒にやりとりしてきた」と説明した。

 「値段は言えないが、世界的に見ても、競争力のある価格で宇宙に持っていって地球に戻ってこれる」(永崎氏)

 同社は2017年に立ち上げ。永崎氏は「世界に冠たる産業を作りたい、世界をリードできる産業を作りたい。それが宇宙だ」という創業の思いを明かした。同氏はまた、宇宙旅行のニュースが報道されることに触れながらも、「“宇宙を利用することでこんないいことがあった、宇宙を使うことで精神的にもこんないいことがあるんだ”。そうした事例をどんどん作っていきたい」と同社の今後を期待を寄せた。

JAXA 有人宇宙技術部門 きぼう利用センター 技術領域主幹 土井忍氏
JAXA 有人宇宙技術部門 きぼう利用センター 技術領域主幹 土井忍氏

 引渡報告会には、JAXA 有人宇宙技術部門 きぼう利用センター 技術領域主幹の土井忍氏も登壇。きぼうは2008年から運用されているが、「JAXAとして、きぼうの特長や微小重力環境という強みを生かしてISSの使い方はどういうものがいいのか、かなり模索してきた」とこれまでを振り返った。

 こうした背景からJAXAは、研究開発成果の最大化という目的をもとに、戦略的、組織的にきぼうの利用を推進していくための方針として「きぼう利用戦略」を2016年に策定(最新版は3版)。Space BDの今回のプロジェクトも、このきぼう利用戦略に沿ったものである。

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