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失敗を解析、次回に生かす–「月面ビジネス」に挑み続けるispaceの不屈不撓

2023.06.14 08:00

田中好伸(編集部)

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 氏家氏は、ミッション1の成果として「ユニークなデータを捉えられた。ファイナンスやビジネスモデルも問題がないことを示せた。(ミッション1を経験したチームは)次のミッションを成功させられる人員となった」と言及し、HAKUTO-Rのプロジェクトチームが成長したことを評価した。

ispace 代表取締役 CEO 袴田武史氏
ispace 代表取締役 CEO 袴田武史氏

 ミッション1で着陸に成功していれば、ispaceは月に着陸した世界初の企業となっていた。ispaceと同じように月着陸を目指している民間企業は米のIntuitive MachinesAstrobotic Technologyの2社。ispaceは、このどちらかに先を越される可能性が高まったということになる。

 しかし、会見でのispaceの袴田氏の発言を見ると、あまり悔しさを感じていないようだった。「市場には複数のプレイヤーが必要だ。ispaceは市場を支えるプレイヤーになりたい」(袴田氏)

 ispaceは、HAKUTO-Rミッションを通じて月面輸送サービスというビジネスモデルを確立させることを狙っている。今回のミッション1でも、国内外の宇宙機関や企業からの貨物(ペイロード)を搭載している(ロックバンド、サカナクションの楽曲が収められているディスクなども搭載)。

 同時に今回のミッション1では、月面の砂や塵(レゴリス)を採取して、NASAにその所有権を売却することも狙っていた。実現していれば、月資源を売買する世界初の企業となっていた。

 ispace米子会社は、NASAの米航空宇宙局(NASA)の「商業月面輸送サービス(Commercial Lunar Payload Services:CLPS)」にも採択されている。

 袴田氏は今後について「ミッション2、ミッション3を継続させていく。ミッション1で得られたものをフィードバックしてサービスの信頼性を高めていく」と自信があることを強調。加えて、ispaceを支える株主やステークホルダーに対して「チャレンジできる環境にあることを感謝している。今後も透明性の高い環境を保ち続けていきたい」と解説した。

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