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商船三井、海上の風況データを「スターリンク」でリアルタイム共有–燃費を削減
2024.03.14 14:13
商船三井は、グループ会社の船舶に周囲の風向と風速を測れる長距離風況観測装置(ドップラーライダー)を搭載し、計測データを衛星インターネットサービス「Starlink」で送信する取り組みを開始した。
対象船舶は、貨物を積んだトラックやトレーラーをそのまま運べる“RORO(Roll-on Roll-off)船”の「むさし丸」(商船三井さんふらわあ保有)。ドップラーライダーはレーザーで距離や形などを計測するLiDARの一種。赤外線レーザーを照射して空気中に浮遊する塵からの反射光を受信し、周囲半径15km圏内の風向と風速を3次元計測できるという。
海上航行する大型船舶にドップラーライダーを搭載したのは、これが世界初の事例としている。搭載するドップラーライダーは京都大学発スタートアップのメトロウェザー(京都府宇治市)が開発した。
むさし丸は、東京と福岡間の運行時に、ドップラーライダーで十数キロメートル遠方の風況を3次元的にリアルタイムで観測する。収集したデータはStarlink経由で陸上へ送信し、船舶の燃費削減や安全運航に役立てる計画。
Starlinkは、Space Exploration Technologies(SpaceX)が提供している衛星コンステレーションによるインターネット接続サービス。船上でStarlinkを利用すると、一般に使われている既存の通信環境と異なり、船舶と陸上基地などとのあいだで情報をリアルタイムで共有できる。
商船三井は、外航船などにStarlinkを試験導入して検証してきた。その結果、通信速度が最大で50倍向上するなど、通信環境の改善につながったという。内航を走るクルーズ船、フェリー、RORO船でも試験導入し、外航船200隻以上への本格導入を決定。2024年12月には、航行中でもワーケーション可能なクルーズ船「MITSUI OCEAN FUJI」の運航を開始する。