レーザーで距離を測る「SLR」反射器が想定通りの性能--デブリの衝突リスク低減に期待

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レーザーで距離を測る「SLR」反射器が想定通りの性能–デブリの衝突リスク低減に期待

2024.08.22 17:00

UchuBizスタッフ

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 レーザーを使って地球低軌道(LEO)などを周回する宇宙機との距離を測る機材が期待通りの成果を出した。機材を開発した宇宙航空研究開発機構(JAXA)が8月22日に発表した。

 JAXAが開発したのは「衛星レーザー測距(Satellite Laser Ranging:SLR)」の反射器(リフレクター)。2月に基幹ロケット「H3試験機2号機が打ち上げたキヤノン電子の超小型衛星「CE-SAT-IE」に搭載された。

CE-SAT-IEに搭載されたMt.FUJI(出典:JAXA)
CE-SAT-IEに搭載されたMt.FUJI(出典:JAXA)

 SLRは、地上のSLR局からレーザーを照射して反射光を検知するまでの往復時間を計って、宇宙機とSLR局間の距離をミリメートル単位で測ることができる。JAXAはSLR用小型リフレクター「Mt.FUJI」を開発して、CE-SAT-IEに搭載した。

 8月2日午後8時32分にJAXAの筑波宇宙センターに整備したSLR局からMt.FUJIにレーザーを照射して、Mt.FUJIからの反射光(リターン)の取得に成功した。JAXAは、軌道上でSLR反射器として所定の性能が発揮されていることを確認したという。CE-SAT-IEまでの距離は約1100kmと説明する。

Mt.FUJIからのリターン取得画面(出典:JAXA)
Mt.FUJIからのリターン取得画面(出典:JAXA)

 運用が終了した衛星や役目を終えたロケット上段などの宇宙ゴミ(スペースデブリ)は増加の一途をたどっており、デブリの位置や軌道などを把握する「宇宙状況把握(Space Situational Awareness:SSA)」の重要性が高まっていると説明。レーダーや光学観測の技術向上で観測能力が向上し、特にLEOでは地上からの視認性の向上が有効であるという。

 こうした背景からJAXAは、軽量で小型、LEOで汎用的に利用できるSLRリフレクターとしてMt.FUJIを開発したと解説する。

 デブリは運用中の衛星にとって衝突というリスクをもたらす。今後打ち上げる衛星などにあらかじめMt.FUJIを搭載することで地上からの視認性を高めることは、衝突リスクを抑えられるとMt.FUJIのメリットを強調する。Mt.FUJIを搭載すれば、衛星測位システム(GNSS)を活用した軌道決定精度を検証できるようになり、衛星の精密軌道決定にも役立てられるとしている。

 JAXAは今後、多くの衛星やロケットにMt.FUJIを搭載するよう働きかけを進めていく予定としている。

Mt.FUJI(出典:JAXA)
Mt.FUJI(出典:JAXA)

 これまでのJAXAミッションに搭載されたリフレクターは、衛星ごとの海外製の特注品が使われてきたという。特注品であるため「高い、重い、大きい」というデメリットが課題となっていたとしている。

 LEOに特化したMt.FUJIは、入ってきた光(入射光)を来た方向に再帰反射する特殊なプリズム「CCR」(Corner Cube Reflector)を7個積んでいる。CCRは合成石英、Mt.FUJI全体はアルミニウムであり、Mt.FUJIは重さが260g、直径が112mm。高度800kmまでに対応できるという

 Mt.FUJIをより小型化した「mini-Mt.FUJI」の開発も進めている。CCRは同じ7個だが、重さは55g、直径は62mmを目指している。対応高度は500kmまで。

 Mt.FUJIは、JAXAが内製しているが、普及や安定供給を目的に民間企業への設計や制作の技術移転を進めているとしている。

つくばSLR局からCE-SAT-IEにレーザーを照射。波長532nmの緑色のレーザーを使用しているため、肉眼でレーザーが視認可能と説明。このときのCE-SAT-IEまでの距離は約1100kmという(出典:JAXA)
つくばSLR局からCE-SAT-IEにレーザーを照射。波長532nmの緑色のレーザーを使用しているため、肉眼でレーザーが視認可能と説明。このときのCE-SAT-IEまでの距離は約1100kmという(出典:JAXA)

関連情報
JAXAプレスリリース
Mt.FUJI概要(JAXA追跡ネットワーク技術センター)

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