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「宇宙光通信」を簡素な装置で実現–KDDIら、フォトニック結晶レーザーを用いた通信実験に成功

2022.09.22 15:07

飯塚直

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 KDDI総合研究所は9月22日、京都大学大学院工学研究科の研究グループと、フォトニック結晶レーザーを用いた高出力自由空間光通信の実証に世界で初めて成功したと発表した。宇宙光通信などへの応用を目指すとしている。

 一般に、光をより遠くに送るためには、高いパワーの光を発射する必要がある。さらに、高いパワーを有する光を発射するためには、ファイバーアンプなど、大型の装置を用いて光を増幅することも必要となる。

 また、ビームの拡がり角を小さくすることも重要となる。ビームの拡がりを抑えるためには、複雑な光学系が必要となり、外部光学系も装置を複雑にし、その結果として装置が大型化するという。

 そこで、高いパワーで狭い拡がり角をもち、レンズフリーで装置を簡素化できるフォトニック結晶レーザーに着目。同社では宇宙などでの自由空間光通信への利用に向けた研究開発を進めてきた。

 今回両者は、フォトニック結晶レーザーを用いた自由空間光通信の実証に成功した。これまでフォトニック結晶レーザーを用いた、レーザー加工や光の測距(LiDAR)は実証されてきたが、通信での実証は世界で初めてとなる。

 今回用いたフォトニック結晶レーザーは、単一の半導体素子でありながら極めて高い出力光を出力することができるため、従来のファイバーアンプなどの大型装置を用いる必要がない。さらに、通常の半導体レーザーと比較して、極めて大きな領域で単一モードで発光するため、ビームの拡がり角が0.1度程度以下と極めて小さくなり、外部レンズ系を用いることなく、そのまま空間に発射することが可能だという。

 実験では64QAM変調された、864MHzの帯域を有するOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重方式)光信号を、1ワット級の光パワーでフォトニック結晶レーザーから発射させ、1.1mの空間伝送に成功した。

 この結果は、フォトニック結晶レーザーを用いた毎秒5ギガビット相当の自由空間光通信の実現の可能性を示すものになるという。

 今後、フォトニック結晶レーザーを用いた、より高出力で高速な自由空間光通信を実現し、Beyond 5G/6G時代における宇宙空間での通信を支える光伝送技術の研究開発を推進していくとしている。

 

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