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小中高大生が作成する超小型衛星、クラファンで費用募集–デブリのデータを収集

2023.03.23 17:13

飯塚直

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 一般社団法人e-kagaku国際科学教育協会(京都市伏見区)は3月23日、「e-kagakuジュニア衛星プロジェクト」(e-kagaku Satellite Project:eSP)で作成する人工衛星「e-kagaku ジュニア衛星」の作成と打ち上げの費用をクラウドファンディングで募集すると発表した。6月18日まで募集する。目標金額は1000万円。

 eSPは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と同協会が共同研究として、中学生や高校生が主体となって「超小型衛星に世界で初めてレーザー反射装置を搭載し、世界のレーザーサイトと協力して正確な軌道を求める」クラブ活動。2020年に世界初の宇宙旅行ビジネスに向けた、低軌道での宇宙ゴミ(スペースデブリ)のデータ収集を目指し、開始したという。

 作成するe-kagakuジュニア衛星は大きさが10cm×10cm×10cm、重量が1kgという1Uの超小型衛星(キューブサット)であり、地球上から光学観測できるほぼ限界の大きさになる。

 衛星には、JAXAが開発した衛星レーザー測距(Satellite Laser Ranging:SLR)用の超小型反射器である「mini-Mt.FUJI」を搭載。地上のSLR局からレーザーを照射し、反射する光の往復時間を計測することで、SLR局と人工衛星との距離をミリ単位で測定できるという。

 そのデータはスペースデブリの軌道解析や民間人の宇宙旅行に必須な宇宙保険の料率など、急成長する宇宙ビジネスに大きく寄与するものと考えている。

 メンバーは、衛星作成経験のない小学生から大学生までの34人。実証実験に2年費やし、部品の選定や回路設計だけでなく、国際電波使用申請などが行われ、2022年12月に打ち上げ実機と同じ仕様の「エンジニアリングモデル(EM)」を完成させている。

エンジニアリングモデル。手前の面に組み込まれているのがmini-Mt.FUJI。地上からのレーザーを反射する(出典:e-kagaku国際科学教育協会)
エンジニアリングモデル。手前の面に組み込まれているのがmini-Mt.FUJI。地上からのレーザーを反射する(出典:e-kagaku国際科学教育協会)

 2023年秋までに、実際に宇宙へ打ち上げる「フライトモデル(FM)」の完成を予定しており、JAXAの安全審査を経て、2024年6月に宇宙に打ち上げ、国際宇宙ステーション(ISS)に設置されている日本実験棟「きぼう」からの放出を予定する。

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