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火星探査機「InSight」、延命より観測継続を選択–電力消失までデータ収集

2022.06.24 15:45

佐藤信彦

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 米航空宇宙局(NASA)は、火星探査機「InSight(インサイト)」の活動を一時停止させて節電することで2022年12月ごろまで運用する計画だったが、電力のある限り最後まで観測活動を続けるとした。そのため、InSightは12月を待たずに機能停止するとみる。

 InSightの目的は、火星の内部構造を調べること。地震計などを備え、火星の地震「火震」を観測してきた。2018年11月の火星到着以来、1300回以上の火震をとらえ、火星の地殻やマントル、コアといった構造の解析に貢献した。

「火震」データから火星の内部構造を解析(出典:NASA)
「火震」データから火星の内部構造を解析(出典:NASA)

 活動に必要な電力は、太陽光発電パネルから得ている。ただし、火星の砂が次第に積もって太陽の光を遮り、発電量力が低下していた。着陸から間もない2018年12月6日に撮影された初めてのセルフィー(自撮り)画像、2019年の3月15日と4月11日の撮影データを合成した画像、2022年4月24日に撮影された最後のセルフィーを比べると、変化がよく分かる。

砂に覆われていくInSight(出典:NASA)
砂に覆われていくInSight(出典:NASA)

 以前の計画では、2022年6月末に地震計の動作を止めて電力を温存するとしていた。しかし、観測せず運用期間を延ばすよりも、できる限りデータ収集することを選択。このまま観測を続けると決定した。その結果、InSightの活動は、8月終わりから9月初めに停止すると見込まれる。

 なお、現在InSightは消費電力をできるだけ少なくしようと、異常時に「セーフモード」へ自動切り替えする保護機能すら止めている。そのため、地球から対処できない問題が突然起きるおそれもある。

InSightの紹介ビデオ(出典:NASA/YouTube)

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