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楽天モバイルも採用の「宇宙の基地局」、恒星アルデバランより明るく–天文学に影響
2023.10.05 11:09
衛星とスマートフォンの直接通信サービスの実現をめざすAST SpaceMobileに対して、天文学者が懸念を表明した。AST SpaceMobileには楽天グループも出資しており、傘下の楽天モバイルが「スペースモバイル計画」として日本全域の携帯エリア化に活用する構想を掲げている。
AST SpaceMobleは地球低軌道(LEO)へと衛星コンステレーションを打ち上げることで、宇宙空間から地上のスマートフォンに向けて、4Gおよび5Gで通信できる環境を構築することを目指している。すでに試験衛星「BlueWalker 3」を打ち上げ、スマートフォンとの5G通信にも成功している。
スマートフォンとの直接通信を実現するにあたり、同社の衛星BlueWalker 3は64平方mという巨大なフェーズドアレイアンテナを搭載している。
10月発行の科学誌「Nature」に掲載された論文ではBlueWalker 3の3カ月に渡る観測が報告された。2022年11月に64平方mのアンテナを展開した直後、明るさは6等級から0.4等級にまで上昇し、夜空で最も明るい天体の一つとなった。その後、衛星の角度が変わったため暗くなったが、2023年4月には再び0.4等級に戻った。0.7等級のアルデバランよりも明く、0等級のベガよりは暗いことになる。
AST SpaceMobileは2024年第1四半期にさらに5機の衛星「Block1 BlueBird」を打ち上げる予定だが、全地球をカバーするコンステレーションを構築するために、さらに多くの衛星を打ち上げるとなれば、天文学への影響は大きくなる。
論文の著者の一人であるSiegfried Eggl氏は、「これらの結果は商業衛星がより大きく、より明るくなる傾向が続いていることを示している。我々は衛星コンステレーションが天文学に与える影響と、その影響を緩和する方法を研究している」と述べている。