ニュース

スペースシフト、作物の作付けや生育の状況把握でSAR衛星データを機械学習

2022.12.23 14:17

飯塚直

facebook X(旧Twitter) line

 スペースシフト(東京都千代田区)は12月23日、アマゾン ウェブ サービス ジャパンと連携し、Amazon Web Services(AWS)上で作物の生育状況を正確に把握する技術「AI搭載精密農業ソリューション」を開発すると発表した。

 スペースシフトは、機械学習(ML)をベースにした人工知能(AI)を活用した衛星データ解析、特に合成開口レーダー(SAR)衛星データを中心としたソフトウェアを開発している。

 現在、SAR衛星の数は急速に増加しており、そのデータを農業などさまざまな分野で活用することで、作物生産の最適化が期待されている。

 しかし、衛星データを利用するエンドユーザーが簡単かつ効果的にデータを活用するためには、解析技術やソフトウェア、開発、提供することが必要となる。そこでスペースシフトは、専門のテクノロジーを活用し、ソリューションの開発にも取り組んでいる。

 農林水産省の統計によると、農家の数は減り続けており、2005年の224万1000人から2020年には39%減になっているという。農業従事者の70%が65歳以上であり、49歳以下は11%となるなど、農業分野は現在、高齢化による農業従事者の減少などの課題を抱えている。

 こうした課題の解決には、データを活用し、人手に頼らない効率的な農作業の支援などの対策が必要になる。

 スペースシフトによると、地球観測衛星は、定期的かつ自動的に広域を一度に撮像できるため、高齢化による人手不足などの課題解決に向けて、活用が期待できるという。

 農業分野では従来、作物の生育状況を推定するために光学衛星で観測してきた。しかし、光学衛星は曇天時の観測ができないため、収穫適期等の解析に必要な時期のデータが取得できないなど、実用上の課題がある。そこで、光学衛星でデータが取得しづらい時期をSAR衛星のデータで補うことで、より継続的な観測の実現を目指す。

 AIを活用することで、SAR衛星データから作物の作付け状況や生育状況を把握できるようになるという。AIやMLのノウハウを生かし、AWS上で開発することで、衛星データ活用市場の拡大を目指す。

 現在、SAR衛星を利用した農作物の生育状況の情報を配信するサービスを開発中だという。得られた情報は、農業分野だけでなく、農産物の流通やマーケティング、広告業界など、さまざまな業界で活用できるよう開発を進めている。

 これにより、経験の浅い農業生産者でも適切な時期に収穫できるようになると説明。広告代理店やメーカーにとっても、旬の時期を早く知ることで効率的なキャンペーンや生産計画を立て、売上向上やコスト削減を図ることができるようになるという。

 スペースシフトは、2022年5月に鳥取県米子市に衛星データ利用技術研究開発センターを開設。県の特産品であるネギを題材に衛星データによる作物の生育モニタリングの実証実験を行っている。

 作付けから収穫までのネギの生育状況をCapella Spaceの小型SAR衛星で定期的に撮影すると同時に、大規模農家と直接連携。ネギの高さや生育過程におけるスペクトル値を人手で計測し、AIの学習データとして活用している。

 鳥取県は、宇宙関連産業を県の将来を担う新産業のひとつと位置付け、産学官連携による宇宙産業の創出に積極的に取り組んでいる。

 AIの精度を向上させるためには、衛星や地上でのデータ収集とモデル開発のサイクルを継続する必要がある。AWSの技術で開発サイクルを効率的に回し、精度向上を目指す。

 IoT端末などのエッジでの実行環境にソフトウェアを構築、実装、管理するクラウドサービス「AWS IoT Greengrass」を利用して、複数のエッジセンサーから地上データを収集、処理し、エッジからAWSにセキュアで低遅延でデータを送信する。クラウドベースの機械学習プラットフォーム「Amazon SageMaker」でAI/MLのためのデータ処理を行う予定。

IoT GreengrassやSageMakerを活用する(出典:スペースシフト)
IoT GreengrassやSageMakerを活用する(出典:スペースシフト)

 AWSのフルマネージドクラウド基盤を活用し、作物の生育状況に関する分析結果を従来よりも迅速に顧客に提供する予定だという。スペースシフトは、AWSを活用した安全で柔軟かつコスト効率の高いデータ処理で正確な作物の生育モニタリングを実現できると説明。世界中の農業分野の顧客にとって、価値の高い技術の提供を目指すとしている。

Related Articles