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JAXAと電通、衛星データで広告を高度化–光学画像の欠損を補完、作物価格を予測

2022.07.04 08:00

飯塚直

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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と電通グループは7月1日、人工衛星データ活用による広告の高度化を通じた需要の創出と、需給の最適化の実現に向けた共創活動を開始すると発表した。

 人工衛星データは、これまでも農業分野で農作物の収量増大や収穫時期予測に活用されてきたが、雲による遮蔽などからデータが欠損し、解析が困難になるといった課題があるという。

 そこで、宇宙ビジネスを目指す企業などとJAXAが対話し、事業化に向けた双方のコミットメントを得て、共同で事業コンセプトを検討するとともに出口志向の技術を開発、実証するプログラム「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)」の一環として、電通グループとそれら課題解決に向けた技術研究を進めていくという。

 得られた情報を農作物や関連商品の販売時期にあわせた広告出稿のタイミングの調整に用いることなどを通じ、販売・広告施策にリアルタイムに反映させ、積極的な需要創出と需給の最適化の実現を目指すとしている。

今回の共創イメージ(出典:JAXA)
今回の共創イメージ(出典:JAXA)

 JAXAでは、こうした新たなユースケースにより、衛星データ利用の更なる拡大を期待する。

 電通は、2020年にテレビ広告の効果を向上させる基盤システム「RICH FLOW」を開発。今回の共創では、合成開口レーダー(SAR)衛星の画像解析などに取り組むスペースシフト(東京都千代田区)や機械学習技術などを応用するFusic(福岡市中央区)とともに、衛星データを解析して農作物の出荷量や出荷時期、価格の予測モデルを構築、高精度化。RICH FLOWを用いることで、当該作物を食材として用いる調味料商材の広告出稿の種類やタイミングの最適化を目指すと説明する。

 広告効果の向上だけでなく、旬な農作物の廃棄ロスを低減し、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)にも貢献することも目指すという。

 JAXAは、これまで培ってきた地球観測衛星の利用技術をベースに、雲の影響などから衛星データ利用が制限される現状課題の改善に取り組むため、人工知能(AI)を活用して光学観測で発生しうる、雲による遮蔽などの地上データ欠損を補完する技術の研究に取り組む。

 新たに農地の協力を得て、実地データと衛星解析データを突き合わせて評価することで、衛星データ解析技術を高度化する予定。

 共創活動による「広告の効率化・高度化」を通じて、宇宙分野以外の新規プレイヤーによる衛星データを活用した需要創造の新たなユースケースを開拓。生鮮食品のサプライチェーン効率化を図り、持続可能な社会の実現を目指すとしている。

今回の共創で目指すメリット(出典:JAXA)
今回の共創で目指すメリット(出典:JAXA)

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