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SierraやAxiom、Nanoracksが語る「商業宇宙ステーション」の可能性と未来

2022.07.29 08:00

阿久津良和

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 国際宇宙ステーション(ISS)は1998年に建設が始まり、現在は有人宇宙活動や微小重力事件、民間人の滞在などの価値を人類にもたらしてきた。

 一方で民間企業による“商業宇宙ステーション”に向けた動きが加速している。現在、取り組みが進められている主な商業宇宙ステーションは米Sierra Spaceなどの「Orbital Reef」、米Axiom Spaceなどの「Axiom Station」、米Nanoracksなどの「Starlab」がある。商業宇宙ステーションはどんな価値をもたらそうとしているのか。

 SPACETIDEが7月19日から3日間開催した、アジア最大級の宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE 2022」で「商業宇宙ステーションがもたらす新たな価値創造」と題したセッションで議論が交わされた。

 登壇したのは、Sierra Space スペースディスティネーション部門シニアバイスプレジデントでゼネラルマネージャーのNeeraj Gupta氏、“宇宙商社”Space BD 代表取締役社長 永崎将利氏、Axiom SpaceとともにAxiom Stationに取り組んでいる三井物産 モビリティ第二本部 輸送機械第四部 宇宙事業開発室 プロジェクトマネジャー 山本雄大氏、Nanoracks 最高イノベーション責任者(Chief Innovation Officer:CIO)Michael Lewis氏。モデレーターは宇宙飛行士で一般社団法人Space Port Japan 代表理事の山崎直子氏が務めた。

「ISSはあらゆる意味で妥協している」Nanoracks

 モデレーターの山崎氏は商業宇宙ステーションが持つ市場性と潜在顧客の開拓方法をパネリストに聞いた。

 Space BDの永崎氏は「効果的なのが日本政府の(宇宙関連)予算増。株式市場も宇宙スタートアップ企業に前向きで、メディアも多く紹介してきた。だが、舞台の外にはギャップがある。外の人々は(宇宙が)『遠いところ』にあると思っているし、テック系企業では『よい市場』という認識だ。そのため(宇宙ビジネスの)可視化が重要になる。われわれはJAXA(宇宙航空研究開発機構)の民間パートナーとして高品質タンパク質結晶生成サービスの打ち上げと回収に成功しているが、宇宙以外の分野から入ってくる方々を刺激して(宇宙ビジネスに)参入してほしい」と呼び掛けた。

Space BD 代表取締役社長 永崎将利氏
Space BD 代表取締役社長 永崎将利氏

 「例えば、男性アーティストグループのJO1が作成したCDカバーのレプリカを作成し、ISSの日本実験棟『きぼう』の『i-SEEP(中型曝露実験アダプター)』に搭載する新たな『ExBAS(簡易材料曝露実験ブラケット)』に運び、6カ月後に持ち帰る『スペースデリバリープロジェクト RETURN to EARTH』を実施したところ、JO1のファンが大きく盛り上がった。このような形で刺激を与えたい。B2C(個人向け)のビジネスモデルを作りたいと考えている」(永崎氏)

 永崎氏は同社の取り組みとして「もう一つが、200年以上の歴史を持つメーカーの資材をISSに持ち込み、新種のやかん作成に取り組んでいる最中だ。他にもAI(人工知能)創薬プラットフォーム『Deep Quartet(ディープカルテット)』と、宇宙特有の微小重力環境を活用した高品質タンパク質結晶構造解析サービスを連携させた共同研究を開始している。まだ初期段階だが、あらゆる可能性を試したい」と語った。

オンラインで参加したNanoracks CIO Michael Lewis氏
オンラインで参加したNanoracks CIO Michael Lewis氏

 NanoracksのLewis氏は「われわれは(市場を刺激するために)二つの取り組みを行っている。宇宙観光も思案中だが、サイエンスに焦点をあてたい」と前置きして、同社が大学や民間企業などとともに「George Washington Carver(GWC) Science Park」で「持続可能な宇宙研究を進めようと考えている。地上と同じ研究環境を宇宙に生み出し、(宇宙を)遠いところと捉える多くの研究者に対してアクセスしやすくしたい」と解説した。

 Lewis氏は続けて二つ目の取り組みとして「具体性を持たせること」を説明した。

 「ISSは素晴らしいところで実験も可能だが、あらゆる意味で妥協している。例えば、宇宙飛行士が実験をしている横で(別の宇宙飛行士が)運動をしていると、実験に振動が悪影響を与える可能性は否定できない。だから、商業宇宙ステーションが(誕生すれば)プラットフォームを個別に利用する機会を得られる。多くの産業界が参入できるビジネスの場になるだろう」

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