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SierraやAxiom、Nanoracksが語る「商業宇宙ステーション」の可能性と未来

2022.07.29 08:00

阿久津良和

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 永崎氏の回答を受けてNanoracksのLewis氏は「同感だ。われわれもビジョンを実現するため、NASA(米航空宇宙局)やJAXAの協力を得てISSの事業やロケットの運搬を行っている。そのためには多くのコストが発生し、先行的に顧客を確保しながら商業的な利用方法を考えなければならない」ことを明かした。

 「もう一つの課題は宇宙ステーションの維持。ヒューストンにいる何千もの職員が正しく機能するように目を配っているが、そこで学んだ教訓を次世代の宇宙ステーションに適用できる。われわれは単に別の宇宙ステーションを作るのではなく、すべての教訓を反映させて維持したい」(Lewis氏)

 Sierra SpaceのGupta氏もコストは常に課題と指摘した上で、こう提言した。「だが、違う角度で見ると長期的コストを下げ、多くの方や今まで(宇宙に)関わらなかった方々をアクセス可能にする方が大きな課題だ。そのためには全員が成功しなければならない。例えば、最初の旅客機に乗るのは本当に高かった。道のりさえ理解すれば需要はついてくる」

 続けてGupta氏は「もう一つの課題は規制。ISSは政府間のパートナーシップという意味でユニークだが、商業の世界は規制や各国のコラボレーション、調整が重要になる。すでに始めなければならない」とビジネスルールの重要性を強調した。

 「課題はいくつもある」と切り出した三井物産の山本氏は「例えば、リスク。現在、ISS利用時は責任が免除されるクロスオーバー契約もあるが、今後ISSが使えなくなったらどうするか。民間企業間のペイロードまたは(地上に損害を与えた際の賠償責任となる)ライアビリティーを契約書内で担保するなど、法規制の枠組みも課題の一つだ」と違う視点から指摘した。

 「コスト(を課題として捉えるの)は皆同じ。可能であればコスト競争力を持つ輸送システムでサービスを提供してコスト抑制に努め、市場が成長すればコストも下がる。(宇宙ビジネス)全体が同じ課題に直面しているので、互いに協力できるだろう」(山本氏)

 山本氏は「需要喚起も重要だ」とし、こう続けた。「弊社にとってNanoracksのセキュアプラットフォームを共有するのがビジョンの一つ。政府やJAXA、パートナーなどステークホルダーの理解を得るため、多くの対話を重ねている」

モデレーターを務めた山崎直子氏
モデレーターを務めた山崎直子氏

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