特集
電力需給バランス調整で期待される日射量予測「Solar Meilleur」の独自性
日射量予測は電力市場を見越して高頻度で更新
Solar Meilleurでは、スカパーJSATが開発しているそらたまごとAIによる日射量予測に加え、電力中央研究所が開発した気象衛星観測「ひまわり」の画像を解析した日射量予測「SoRaFAS」も組み合わせる。これで地上と宇宙の両方から雲を追跡して予測するわけである。
地上のそらたまごでの日射量予測と宇宙のひまわりからの日射量予測は一長一短だ。
そらたまごでの日射量予測は、特定地点での雲の動きを把握するのに優れており、短時間の予測に適している。ただし広範囲の予測は苦手。ひまわりからの日射量予測は、広範囲の雲の動きを把握するのに優れており、長時間の予測に適している。ただし特定地点の予測は苦手だ。
つまり、そらたまごとひまわりが組むことで弱点を補い合っているわけだ。
Solar Meilleurは電力市場での太陽光発電事業者への提供も想定している。電力自由化に伴い、電力には容量市場、卸電力市場、需給調整市場が生まれた。そのなかでも卸電力市場の時間前市場(当日市場)や需給調整市場で「Solar Meilleurの予測が有効になる」(小渕氏)
電力市場での太陽光発電事業者の観点で考えると、日射量予測は日射量の変動を正確に捉えることと、市場売買におけるニーズに応えることが重要になる。その点、Solar Meilleurでは太陽光発電所の上空をピンポイントで観測し、雲の種類や状態を的確に識別することで正確に日射量を予測できるようにしている。
予測対象時間で見ると、そらたまごが捉える天球画像からは15分先までの日射量を予測できて、更新は1分間隔、ひまわりの画像からは3時間先までの日射量を予測できて、更新は10分間隔でできる。とても頻繁に更新できるようになっている。予測データは他システムと連携しやすいようにAPIで提供される。
富山県氷見市では、経済産業省「2021年度エネルギー構造高度化・転換理解促進事業費補助金」を活用した「太陽光発電設備を電源とした地域マイクログリッドの実現を目指した実証事業」を実施したが、ここにSolar Meilleurの日射量予測データを提供した。
電力は生活に欠かせない重要なエネルギーであり、これからは再生可能エネルギーの割合が増えていくとみられる。ただし再生可能エネルギーは先述したように天候頼みのところもあり、調整が難しいという側面を持つ。また近年では地域内に分散している複数のエネルギーリソースを仮想の発電所として統合して制御する仮想発電所(Virtual Power Plant:VPP)が注目されており、出力予想の正確さを高めて行くことは今後ますます重要性が高まるだろう。