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電力需給バランス調整で期待される日射量予測「Solar Meilleur」の独自性

2022.05.03 08:00

田中好伸(編集部)、加山恵美

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 「春分の日」で祝日だった3月21日の夜に東京電力と東北電力の管内で「電力需給逼迫警報」が発令され、節電が呼び掛けられた。日本国内の電力が全体として不安定であることが再認識される事態となった。

 こうした背景から、スカパーJSATが開発している、太陽光発電の出力予測に役立つという「Solar Meilleur」が注目できる。現在は正式サービス提供に向けて準備段階にあるSolar Meilleurは、空からの衛星画像と、地上の天球カメラの画像を機械学習した人工知能(AI)が正確な日射量を予測する。

電力の需給バランス調整の難しさ

 電力供給はいま「過渡期にある」とスカパーJSAT 宇宙事業部門 新領域事業本部 新規事業開発部 専任主幹 小渕浩希氏は言う。

 かつては原子力や火力、水力などの発電所から電力が供給されていたが、近年では太陽光や風力など再生可能エネルギーを利用した小規模の発電も増え、電力供給の流れは変化してきている。再生可能エネルギーが増えることで電力供給の支えになるものの、再生可能エネルギーは天候次第であり、出力が「揺れる」。火力のように柔軟に調整可能ではない。

 今回の電力需給逼迫警報の原因は、3月16日に福島県沖を震源とする地震でいくつかの火力発電所が被災し、停止に追い込まれてしまったことだ。火力発電所がまだ復帰できていない18日には、追い打ちをかけるように悪天候で気温が低下。雲に遮られて太陽光発電できず、暖房でより多くの電力需要が発生し、深刻な電力不足が生じた。電力需給逼迫警報が出された翌日の22日には多くの人が節電に協力し、水力発電の揚力分を回すことで何とか乗り切れた形だ。

 今では太陽光発電も貴重な電力源だ。火力発電は燃料費が高騰しているため、できるだけ余剰電力は出したくない。だからといって不足を出すわけにはいかない。緻密に需給バランスを制御する必要がある。もしバランスが崩れると周波数が変動して産業用機器に不具合が生じ、最悪の場合停電も起こりうる。そのためには“晴れ”頼みの太陽光発電がどれだけ発電できるかを正確に予測する必要がある。

太陽光発電の出力予測が必要な背景(出典:スカパーJSAT)
太陽光発電の出力予測が必要な背景(出典:スカパーJSAT)

天球カメラと日射計を搭載した「そらたまご」と雲識別AI「KMOMY」

 そうした課題があるなか、スカパーJSATが太陽光発電の出力予測に役立つSolar Meilleurを開発し、現在は正式サービス提供に向けて準備段階にある。Solar Meilleurは空からの衛星画像と地上の天球カメラの画像をAI解析することで、正確な日射量を予測する。

 Solar Meilleurには前身となるプロジェクトがある。この時の目的は日照量予測ではなく、気象観測だった。

 海上での気象観測は、フェリーや輸送船などのうち一定の要件を満たす船舶に義務付けられており、観測結果は気象庁に報告しなければならない。いくつかの項目のうち雲の観測は人が甲板に出て目視で行っている。

 「(陸上にある)気象台と同じレベルの観測を船でもやらないといけない」(小渕氏)

スカパーJSAT 宇宙事業部門 新領域事業本部 新規事業開発部 専任主幹 小渕浩希氏
スカパーJSAT 宇宙事業部門 新領域事業本部 新規事業開発部 専任主幹 小渕浩希氏

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