米インテュイティブ、月の通信やナビでNASAと最大7000億円の契約

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米インテュイティブ、月の通信やナビでNASAと最大7000億円の契約

2024.09.20 16:00

塚本直樹田中好伸(編集部)

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 米Intuitive Machines(インテュイティブ・マシーンズ)は米国時間9月18日、月での通信と航法(ナビゲーション)について米航空宇宙局(NASA)と最大48億2000万ドル(約6900億円)の契約を締結したと発表した。

 今回の契約は、NASAが主導する月探査計画「Artemis」(アルテミス)を支援するためのものだ。地球や月の周回軌道を回るNASAの衛星が通信する“近宇宙情報網”「Near Space Network(NSN)」の一部として月との通信中継をサポートする契約になる。通信のほかに測位や航法の機能も含まれる。

 契約の当初のタスクは、NASAがArtemisを支援するために、月との通信を中継する機能などを段階的に検証する。月との通信を中継する機能は、無人と有人の両方を含む探査機の月着陸、月面での探査車(ローバー)を含めた宇宙機で使用される見込みだ。

 「我々はArtemisと月面経済の拡大に向けた取り組みを支援するために、NASAと提携できることを嬉しく思う」と、Intuitive Machinesで最高経営者(CEO)を務めるSteve Altemus氏は述べている。

(出典:Intuitive Machines)
(出典:Intuitive Machines)

 Artemisを含めて月の探査計画は南極の付近を対象にするものが多くなっている。月との通信を中継する衛星がないことから南極付近への着陸機会は制限されているとNASAは説明する。

 今回の契約でIntuitive Machinesは月の周回軌道に衛星コンステレーションを構築する考えだ。月のコンステレーションは、4Kの高画質映像を送受信するとともに(地球で活用されている米GPSのような)測位や航法の機能をもたらす衛星のネットワークを構築することになるという。

 Intuitive Machinesによる月との通信中継は、観測機器やローバーなどの貨物(ペイロード)の月への輸送をNASAが民間企業に有償で委託する「商業月面輸送サービス(CLPS)」で使用されることをNASAは期待していると説明する。

 NASAによれば、これらの機能でNASAの深宇宙情報網「Deep Space Network(DSN)」への負荷を下げられると説明する。DSNは外宇宙を航行する探査機と通信するための巨大アンテナで構築されるネットワーク(米ジェット推進研究所=JPLが運営している)。DSNは近年、水星や金星といった内惑星や月、地球の近くを通る小惑星や彗星などの探査機にも活用されており、需要の増加に応えられなくなっている

 海外メディアのSpaceNewsによると、2022年の「Artemis I」の飛行をサポートするために、DSNにはかなりの負荷がかかっていると指摘。今後、月周回ミッション「Artemis II」や有人月着陸ミッション「Artemis III」を考えるとDSNへの依存度合いを下げることは課題と認識されるようになっている。

 月との中継を含む月での通信と航法の機能は、ゴダード宇宙飛行センターが運営するNSNのチームが運用する。NSNは、地球を周回する、追跡・データ中継衛星「Tracking and Data Relay Satellite」(TDRS)によるサービスも提供している。

 Intuitive Machinesは、月を周回する衛星「KHoN」によるデータ中継サービスを発表している。York Space Systemsが開発し、Intuitive Machinesが運用するKHoNが今回の契約と関係があるのか、Intuitive Machinesは明らかにしていない。

米アラスカ州にあるNSNのアンテナ(出典:NASA / Goddard)
米アラスカ州にあるNSNのアンテナ(出典:NASA / Goddard)

関連情報
Intuitive Machinesプレスリリース
NASAプレスリリース
NSN概要
DSN概要
SpaceNews

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