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NASAの深宇宙通信網「ディープスペースネットワーク」、需要増大でパンク寸前

2023.09.01 15:04

塚本直樹

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 米航空宇宙局(NASA)の深宇宙通信網「Deep Space Network(DSN)」(ディープスペースネットワーク)が需要の増加に応えられなくなる可能性がある。NASAの諮問委員会の指摘を引用し、海外メディアのSpace Newsが報じた。

(出典:NASA/JPL-Caltech)

 DSNは、3つの通信施設から構成される宇宙向けの通信ネットワークだ。アンテナはオーストラリアのキャンベラ、米国カリフォルニア州ゴールドストーン、スペインのマドリードに設置されており、深宇宙の宇宙船や探査機と地上の昼夜を問わず連続的な通信を保つことができる。

 DSNの主な役割は、地球と太陽系の他の場所にある宇宙船や探査機との通信を確立することだ。火星探査車や土星の探査機、さらには冥王星を訪れた探査機など、多くの有名な宇宙ミッションもDSNを利用している。

 遠く離れた宇宙の探査機と通信するため、地上のアンテナは非常に大きく、最大のものは直径70mにも及ぶ。深宇宙からの微弱な信号を受信する能力を持つほか、深宇宙に指示を送るための強力な送信機能も備えている。

 NASA諮問委員会の科学委員会では、DSNの需要が増加する一方で予算が減少しており、NASAの科学ミッションや月探査計画「Artemis」の通信能力を脅かしていることが指摘された。実際に、2022年に実施された「Artemis I」のミッション期間中には、「James Webb」宇宙望遠鏡などの科学ミッションのDSNの割当時間が削減されたという。

 DSNの予算も減少しており、2010年には2億5000万ドル(約360億円)あったが、現在は2億ドル(約290億円)となっている。さらに将来もDSN予算は減少することが予測されており、今後が危ぶまれている。

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