アイスペース、月への貨物輸送で米企業と契約--自律航法機器の開発で1億円

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アイスペース、月への貨物輸送で米企業と契約–自律航法機器の開発で1億円

2024.03.08 17:00

塚本直樹田中好伸(編集部)

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 ispace(東京都中央区)は3月8日、米法人ispace technologies U.S.(ispace US)と米Rhea Space Activity(RSA)で貨物(ペイロード)輸送サービス契約を締結したことを発表した。

 ispace USは米Charles Stark Draper Laboratory(Draper、米マサチューセッツ州)を筆頭にした企業グループ「Team Draper」に参加。米航空宇宙局(NASA)は、民間企業に月までのペイロード輸送を委託する「商業月面輸送サービス(Commercial Lunar Payload Services:CLPS)」をTeam Draperと契約している。

 日本のispaceは月探査プログラム「HAKUTO-R」のミッション1で着陸船(ランダー)を開発し、打ち上げて、月着陸を目指した。ミッション1のランダーは残念ながら着陸寸前で失敗したが、多くの行程で成功させている。

 HAKUTO-Rのミッション2の打ち上げは2024年10~12月に予定されているが、その後のミッション3はTeam Draperの一員として、ispaceがランダーの設計やミッション全体の運用などを担当する(ミッション2はispace単独で運用される)。

 米法人を含めたispaceがランダーの設計やミッション全体の運用などで参加する、Team Draperの月着陸ミッション「APEX 1.0」は、3つの科学機器を含むペイロードを月の周回軌道と月の裏側に輸送する。

 APEX 1.0のランダーに搭載され、月周回軌道に輸送される通信衛星にRSAが開発する自律航法誘導制御機器「Jervis Autonomy Module(JAM)」が搭載される。JAMを開発するためにRSAはNASAから75万ドル(約1億1000万円)の補助金を獲得している。

 RSAが開発するJAMは、地球の地上局や人工衛星との通信ではなく、天体の画像から宇宙での軌道を決定することで、宇宙機を自律的に誘導制御できるという。月や惑星、彗星、小惑星、その他の天体の写真を12時間ごとに数枚撮影することで宇宙での宇宙機自身の位置を把握し、正確に自律航行できる技術と説明する。

 JAMは、APEX 1.0のランダーが予定している、月の裏側の着陸地点と地球との通信確立を狙う2機の通信衛星を円滑に運用されるために活用されるという。

 APEX 1.0では、月の南極付近にあるSchrodinger Basin(シュレーディンガー盆地)へのペイロード輸送を予定。月に輸送されたペイロードは月の地震活動や熱流、磁場などを測定して月面環境を調査する計画となっている。APEX 1.0は2026年を予定している。

 RSAの最高経営者(CEO)を務めるShawn Usman氏は「JAMで深宇宙や月のミッションは、NASAの深宇宙通信情報網(Deep Space Network:DSN)から100%独立した天測航法で自律的に希望する軌道を維持できる」と語っている。

 「DSNは深宇宙ミッションへの参入に大きな財政的障壁となっている。JAMは深宇宙へのアクセスを民主化する」(Usman氏)

 RSAは2018年設立。本社は米ワシントンDCだが、英国にも拠点を置いている。誘導制御と通信技術を専門とする科学者と技術者で構成されているという。

(左から)ispace 取締役 最高財務責任者(CFO) 野﨑順平氏、RSA 航法誘導制御(GNC)エンジニア Josh Baumann氏、RSA CFO Samuel Lee氏 、ispace US CEO Ronald Garan Jr.氏、ispace 代表取締役 CEO 創業者 袴田武史氏(出典:ispace U.S.)
(左から)ispace 取締役 最高財務責任者(CFO) 野﨑順平氏、RSA 航法誘導制御(GNC)エンジニア Josh Baumann氏、RSA CFO Samuel Lee氏 、ispace US CEO Ronald Garan Jr.氏、ispace 代表取締役 CEO 創業者 袴田武史氏(出典:ispace U.S.)

 CLPSは米企業が契約主体であることが前提であり、宇宙機の製造を米国内で進めることが求められている。CLPSはこれまでにAstrobotic TechnologyIntuitive Machinesが契約を実行。Astroboticの着陸船「Peregrine」は推進剤を喪失して着陸を断念。Intuitive Machinesの月着陸ミッション「Intuitive Machines-1(IM-1)」として打ち上げられた着陸船「Odysseus」(Nova-C)は2月に民間企業初の月着陸に成功している。

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ispaceプレスリリース
SpaceNews

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