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JAXAと国土地理院、測位衛星の軌道情報算出に参画–国際的機関から品質を認定
2023.12.04 17:22
宇宙航空研究開発機構(JAXA)と国土交通省 国土地理院は12月4日、国際GNSS事業(International GNSS Service:IGS)の「解析センター」に日本の機関として初めて認定されたと発表した。
米GPSや日本の準天頂衛星システム(Quasi-Zenith Satellite System:QZSS)「みちびき」に代表される衛星測位システム(Global Navigation Satellite System:GNSS)は衛星の軌道情報(暦:れき)をもとにして、地上の位置を決定する(測位)システム。地殻変動が激しい日本では、位置の基準の維持や管理に活用されている。
より精度の高い測位には、より高品質な軌道情報(精密暦:せいみつれき)が必要不可欠となっており、現在はIGSが提供する「IGS暦」が最も高い精度を有するとされている。
国際的な組織であるIGSは、測地学や地球物理学などの研究活動の支援、社会一般でのGNSSの利用促進を目的として、国際測地学協会(IAG)の下で世界の各国や地域200以上の機関の協力で運営されている。
解析センターは、IGSの公式プロダクトとして、GNSS衛星による精密暦の算出を担当する機関。IGSの意思決定会議で承認され、これまで北米、欧州、中国の計12の機関が登録。米国立測地測量局(Office of National Geodetic Survey:NGS、米海洋大気庁=NOAA傘下)といった国家測量機関に加えて、米航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)などの宇宙機関も含まれている。
各解析センターが独自に算出した精密暦をIGSが統合処理することで、世界最高精度の精密暦を算出している。
JAXAと国土地理院は、7月から算出した精密暦の公開を開始。IGSで品質の評価が進められてきた。
今回、十分な高い精度を有することが確認されたことから、12月1日に開催されたIGSの意思決定会議で日本の機関として初めて解析センターに認定された。今回の決定で日本の精密暦がIGSで統合処理されるようになる。
解析センターには、独立した解析ソフトウェアや実施主体による高品質なプロダクトの提供能力と長期的な貢献が求められるという。
JAXAと国土地理院は、世界最高精度とされるGNSS衛星の軌道情報算出に参画し、高精度測位に必要となる基盤の整備に貢献していくとしている。
IGS暦は、IGSが高い技術力を有すると認めた北米や欧州、中国の限られた国家機関や研究機関、大学などの精密暦をもとに算出。このため、日本の位置の基準は、海外機関に大きく依存しているという課題があった。
国土地理院は、全国約1300カ所の「電子基準点」でのGNSSデータ解析を25年以上安定的に進めてきた。電子基準点は、GNSS連続観測点であり、日本の位置の基準である「国家座標」に整合する。主に測量の基準点、地殻変動の監視、位置情報サービスの支援として活用されている。
JAXAでは、国産のGNSS軌道計算ソフトウェア「MADOCA」を開発し、精密暦の精度を改善するための技術を長年開発してきた。MADOCA(Multi-GNSS Advanced Demonstration tool for Orbit and Clock Analysis:複数GNSS対応高精度軌道時刻推定ツール)は、電子基準点やIGSの観測点などのGNSS観測点で取得した情報をもとに、GNSSの正確な精密暦や衛星時刻、GNSS観測点の座標値などを計算するソフトウェア。
JAXAと国土地理院が連携し、国土地理院がMADOCAで精密暦を算出。JAXAがその運用結果に基づき、MADOCAを改良する協力体制を構築したことで国内で精密暦を安定的に算出できるようになったという。
関連リンク
JAXAプレスリリース/国土地理院プレスリリース