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DARPA、回転する液体に反射させる「液体ミラー望遠鏡」開発プロジェクトを発表

2023.01.26 15:20

佐藤信彦

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 米国防高等研究計画局(DARPA)は、ある種の液体を反射鏡として利用する望遠鏡の研究開発プロジェクト「Zenith(ゼニス)」を発表した。宇宙望遠鏡だけでなく、地上に設置する望遠鏡もこの技術で実現させる計画。

 凹面鏡で光を集めて観測する現在の反射望遠鏡は、ガラスやベリリウムをベースにした鏡を使っている。鏡が大きいほど性能は高くなるが、巨大な主鏡を備える望遠鏡は製造が困難でコストも高く、維持も難しい。

 特に「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope:JWST)」のような宇宙望遠鏡は、鏡に流星塵(りゅうせいじん)が衝突すると観測に支障を来しかねない。鏡が損傷しても、宇宙空間にあるので簡単には修理できない。

 「液体ミラー望遠鏡(Liquid-Mirror Telescope:LMT)」は、何らかの流体を回転させて形成される凹面を鏡として利用する。この仕組みにより、ガラス製ミラーなどを使う望遠鏡の短所を克服できる。

 まず、製作が比較的容易で、少ないコストで作れるうえ、大型化もしやすい。宇宙望遠鏡なら、流星塵が衝突しても損傷しないメリットがある。

 地上に設置する場合でも、ほこりなどの影響を受けにくく、鏡の再コーティングが不要で、保護用の巨大なドームを建設する必要もない。回転する流体で作られる凹面は回転放物面となり、集光に理想的な形状なので、理論通りの高い分解能が得られる。

 既存のLMTには、傾けると地球の重力で凹面が歪んでしまうため、天頂しか観測できないという大きな欠点があり、実用性が低い。宇宙望遠鏡として使うと、回転させ続けるのに必要な燃料や回転させることによる設計の難易度上昇が問題になる。

 DARPAのZenithでは、新しい素材や電磁力の制御方法を検討し、天頂以外の観測や宇宙望遠鏡に使えるLMTの実現を目指す。計画期間は4年で(1)基礎設計、(2)実験室レベルのデモンストレーション、(3)空中でのデモンストレーション――という3段階に分けて取り組む。

Zenithの紹介ビデオ(出典:DARPA/YouTube)

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