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ソニー独自の通信規格「ELTRES」、宇宙での信号受信に成功–Space BDが支援
2022.11.30 13:27
Space BD(東京都中央区)は11月29日、ソニーグループに対し、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」の船外プラットフォーム利活用サービスを提供したと発表した。
Space BDの船外プラットフォーム利活用サービスでは、電力や通信などの実験に必要なリソースをISSから直接供給を受けることで、人工衛星による実験と比べて迅速、安価、低リスクでの実験を可能とする「中型曝露実験アダプター(IVA-replaceable Small Exposed Experiment Platform:i-SEEP)」を活用している。
同サービスを、ソニーグループが独自に開発するIoT向け低消費電力広域(Low Power Wide Area:LPWA)通信規格「ELTRES」に対応した無線実験装置の宇宙での実証実験環境に提供した。
ソニーグループによると、地上のIoTデバイスから送出された電波を受信することに成功し、2022年10月27日に軌道上での全ての実証実験が完了したという(宇宙での信号受信に成功は2021年12月3日に発表)。
ELTRESは、地上においてわずか20mWの送信電力で、見通し100km以上の伝送を可能としており、日本国内ではすでに一部の山岳地帯や海上でも運用を開始。ソニーネットワークコミュニケーションズが「ELTRES IoT ネットワークサービス」として、国内商用サービスを提供している。
受信局の設置が困難な険しい山岳地帯や水平線を超える遠く離れた海上では、地形や波浪で電波が遮られる場合があることから、軌道を周回し、地上から完全な見通しを確保できる人工衛星の活用が期待されているという。
実験では、ELTRESの長距離安定通信と高速移動体通信の特徴を生かし、地上から送出された電波を上空400kmの軌道上を高速移動するISS側で高精度に受信することを確認。場所の制約を受けることなく通信できるという新たな可能性を実証したという。
Space BDによると、曝露実験期間の延長を含むソニーグループの運用計画の見直しに柔軟に対応できたこともi-SEEPを用いた軌道上実証の強みだと説明する。
日本初の外部運用クラウドを活用することも特徴と説明。これまでデータ取得などのためにISSと通信をするためには、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の筑波宇宙センターの敷地内からJAXAの管制官を通じてのみ連携をすることが可能だった。
2022年4月にJAXAが新たに整備した外部運用システムを活用することでソニーグループは事前に許可されたJAXA敷地外からISSと通信でき、Space BDが窓口となりサポートすることで、より効率的で手軽な軌道上実証を実現できたという。
Space BDは、2019年にJAXAからi-SEEP利用事業に関する唯一の民間事業者として選定を受けて以降、国内外の幅広い分野での利用開拓に加えて、JAXA施設だけでなくエンドユーザーによる外部運用が可能となる機能など、サービス拡充に取り組んできた。
Space BDは引き続き、宇宙分野での専門的な技術ノウハウと、宇宙分野での事業経験を生かし、i-SEEPの利用促進、宇宙産業の裾野拡大に貢献していくという。