インタビュー

SpaceX「Falcon 9」で日本初の衛星打ち上げサービス–宇宙商社Space BDが目指す宇宙ビジネスの未来

2022.01.20 08:00

田中好伸(編集部)、阿久津良和(フリーライター)

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 2017年9月に創業したSpace BDは、2018年5月に宇宙航空研究開発機構(JAXA)が国際宇宙ステーション(ISS)で運用する、日本の宇宙実験棟「きぼう」から、100kg級以下の超小型衛星を宇宙空間に放出する「超小型衛星放出事業」のサービス事業者として選定されたことを皮切りにグローバルに実績を積み上げている、注目の宇宙ビジネス企業である。同社代表取締役社長 永崎将利氏に話を聞いた。

2022年10月にFalcon 9での打ち上げが予定されている
2022年10月にFalcon 9での打ち上げが予定されている(出典:SpaceX)

必要なものは全部やる“何でも屋”

――Space BDは宇宙領域の事業開発を行う「宇宙商社」を標榜しています。どのような企業を目指しているのでしょう。

 私は11年ほど三井物産の鉄鋼製品貿易と鉄鉱石資源投資の部門でお世話になり、ビジネスモデルの両端を経験する中で商社の本質を考えていましたが、(そのときの答えが)「事業開発のプロ」でした。技術開発や技術革新が、産業の発展の中枢を担う一方で、事業開発側と組んで市場の声をしっかり取り入れ、技術開発にかかる手間と負担を事業開発側が引き取る、そして売る。これを両輪で回さないと事業の発展には至りません。

 「もう一度日本から、世界に冠たる産業を作りたい」という思いで宇宙をやろうと決めたとき、事業開発側に注目しました。Space BDを創業する7カ月ほど前から、いろいろな方とお会いして勉強してきましたが、日本の技術は世界トップクラス、しかしビジネスに立脚した考えを持つ方は少なかったです。また、宇宙は何を売るのか、誰が喜ぶのか不明確な部分が多い。

 だから、われわれが需要を創出して、そこで宇宙産業の発展に必要なものは全部やる“何でも屋”、昔の商社をやろうと考えました。それが「宇宙商社」です。ただ、「商社=仲介業者」というニュアンスが強く、最近は補足説明を付けていますが、本質は変わりません。

 宇宙産業が発展する中で大事なのが、衛星打ち上げサービスです。最初に宇宙空間へ何かを届けないとスタートできません。すべての人が必要とするインフラが整備されれば、産業の裾野を広げることにもなり、限られたリソースで人工衛星に挑戦している方々のチャレンジの幅を広げられます。

 ただ、小型化が進む衛星開発側にとって衛星を打ち上げるロケット1本を購入することは難しく、ギャップが生じているので、そこに立脚することにしました。

 創業1年目は自身の営業能力にも自信があり、(永崎氏を中心とした)文系チームでイケると思っていましたが、初めて挑戦する顧客や意思決定者もエンジニア(技術者)出身の方が多く、われわれも技術力がないと話になりませんでした。

 例えば、海外の顧客に「衛星を打ち上げないか」と商談を持ちかけても、技術会話がプロレベルにないと信頼は得られず、自分自身も話を理解しきれませんでした。また、鉄板や鉄鉱石の貿易であれば、スケジュールやサイズ、不純物の許容量など変数が決まっているものの、衛星は一品もので規格化されていません。

 技術的対話で顧客から安心感を得てもらうには、文系チームだけでは足りないという判断から、技術力に立脚した営業力、技術力に立脚した事業開発力を重視しました。ある意味、変わり身が早かったと思います。

 2017年末ごろ、東京大学 大学院新領域創成科学研究科におられる小泉宏之先生(准教授、Pale Blue共同創業者兼最高技術責任者=CTO)が、JAXAで実証機を打ち上げることになったものの、JAXAに支払う実費が必要ですが、JAXAは前金支払い、小泉研は一括清算払いとギャップが生じていました。

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