インタビュー

SpaceX「Falcon 9」で日本初の衛星打ち上げサービス–宇宙商社Space BDが目指す宇宙ビジネスの未来

2022.01.20 08:00

田中好伸(編集部)阿久津良和(フリーライター)

facebook X(旧Twitter) line
1 2 3 4

 とある方から紹介を受けて小泉先生とお会いしたときに、「Space BDも参加できれば、衛星を打ち上げるプロセスを学べる。(費用を一時的に)立て替える代わりとしてプロセスを勉強させてほしい」とお願いし、Space BDがJAXAと契約して仕入れた枠を小泉研と契約して販売したことがあります。

 これが弊社における最初の契約になりました。当時は(同社取締役で最高執行責任者=COO兼ローンチサービス事業本部長)金澤(誠氏)と野口(美菜子氏、コーポレート部)の3人で、資本金は調達したばかりの1億円。立て替えた金額は800万円で約10分の1、打ち上げ後の回収まで1年半程度を見込まなければならないことを思えば、それなりに思い切った意思決定でしたが、大事なのは足を踏み入れて経験を積むことです。サラリーマンから独立して教育事業などさまざまな経験を得ましたが、「経験と実績がすべて」だと骨身に染みています。

「生きるか死ぬか」やれることは全部やろう

――創業当初のSpace BDがJAXAに選ばれたことは大きいですね。「きぼう」の民間利用では、どんな苦労があったのでしょうか。

 もう「生きるか死ぬか」で、やれることは全部やろうと。トラディショナルな組織であるJAXAの最終審査会でプレゼンしたのは2018年4月20日です。勢いだけでは通用しないと考え、小泉先生の衛星を扱った経験と、2億円の追加増資(インキュベイトファンド4号投資事業有限責任組合とアニヴェルセルHOLDINGSを引受先とした第三者割当増資を同月に実施)。加えて社内エンジニアリングの強化を目的に、何度も足を運んで宇宙技術開発(SED、東京都中野区)の協力を得ました。

 前月にISSの商業利用ではトップクラスの企業であるNanoRacks(米テキサス州)とMOU(基本合意)を締結できたことも大きいです。月に1~2回渡米していましたが、あの頃が一番キツかったですね。事業者選定の公募で負けたら、次にやることがなくなります。それまでのビジネス人生でも、ここまで寝ずに仕事をしたのは初めてでした。

 本来、JAXAのプレゼン結果は1週間後に発表されると聞いていたので、(プレゼンを終えた日に)社員とともに打ち上げをしようと「HUB」(スポーツパブ)のカウンターで注文している最中にJAXAからのメールが来ました。「貴社を事業者として選定する」と。もうカウンターで泣き出してしまい、その後も周囲から奇妙な目で見られましたが、投資家の方も合流してその日は盛り上がりました。

宇宙を身近に感じてもらう

――「きぼう」の民間利用では木材試験やマーケティング実験など、ユニークな取り組みを予定しています。「中型曝露実験アダプター(IVA-replaceable Small Exposed Experiment Platform:i-SEEP)」の利用方法など予想を聞かせてください。

1 2 3 4

Related Articles