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楽天モバイル、衛星とスマホの直接通信で「ビデオ通話」に成功–2026年秋以降にサービス開始へ

2025.04.24 08:00

田中好伸(編集部)

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 楽天モバイルは4月23日、衛星との直接通信サービスを2026年第4四半期(10~12月)に提供することを発表した。これまではサービス提供開始を2026年内としていた。サービスに使用する周波数帯や料金などは未定。

 同社と楽天グループが出資する米AST SpaceMobileが運用する商用衛星「Bluebird」を利用する。AST SpaceMobileは2024年9月に同社の第1世代機である「Bluebird(Block 1)」を打ち上げ。 5機のBlock 1は2024年10月に地球低軌道(LEO)への展開も完了している

 楽天モバイルは2025年4月にBlock 1と直接通信してビデオ通話に成功させたことを発表。試験では、福島県内に設置した楽天モバイルのゲートウェイ地上局から電波をBlock 1に向けて発信、衛星を経由して地上のスマートフォンが受信することに成功した。

 市販されているスマートフォン同士で福島県と東京都でビデオ通話アプリで通信できることを確認した。今回の試験は、実験試験局免許の予備免許を取得した事前疎通確認になる。今後実験試験局免許を取得した後に通信試験を開始する予定。

 4月23日に開いた記者会見に登壇した楽天モバイル 代表取締役会長の三木谷浩史氏(楽天グループ 代表取締役会長兼社長)は、同社の人口カバー率が99.9%であることを説明。その上で、AST SpaceMobileの衛星を活用して「つながりやすさでも最強を目指す」とした。

 日本では、2025年4月10日からKDDIが同社スマートフォンと衛星が直接通信するサービス「au Starlink Direct」の提供を開始した。au Starlink Directは今夏からデータ通信を提供予定だが、現時点ではSMSやRCS、iMessageでのテキストメッセージの送受信、緊急地震速報などの受信、現在地の位置情報の共有に対応している。

 対する楽天モバイルの衛星直接通信では現時点でビデオ通話アプリに対応している。

 au Starlink Directでは米Space Exploration Technologies(SpaceX、スペースX)の「Starlink」衛星を活用している。楽天モバイルの三木谷氏は、同社の差別化ポイントして衛星のアンテナの面積を強調した。Starlink衛星のアンテナ面積は約6.2m2だが、楽天モバイルでは、その36倍となる約223m2になる。

 この223m2というアンテナ面積は、今後打ち上げられる予定の次世代衛星「Bluebird(Block 2)」の大きさ。現在LEOを周回している現行機であるBlock 1のアンテナ面積は約64.4m2(それでもStarlinkの10倍以上の大きさになる)。Block 2は2024年8月から製造が開始した

 AST SpaceMobileのBlock 2衛星は40機の生産が進行中であることが明らかになっている。Block 2衛星は打ち上げスケジュールが明らかになっていないが、同社は2025年と2026年に約60機を打ち上げる能力を確保していることも明らかにしている(Block 2衛星のピークデータ速度はBlock 1衛星の10倍となる120Mbps)。

 同社は50機以上を計画しているが、Starlink衛星は7000機以上がすでに稼働している(Starlinkはアンテナの面積は小さくても、その分周回する衛星の数でカバーしているとも言える)。

 三木谷氏はアンテナの「大きさは重要」と主張。「スマートフォンは小さいため、電波のパワーも弱い。バッテリーも小さい」(三木谷氏)。そこで衛星に搭載されるアンテナが大きいことで一つの衛星で送受信できる面積が大きいことが優位性につながると説明する。

(出典:楽天モバイル)
(出典:楽天モバイル)

 楽天モバイルの三木谷氏は、他社を含めた日本のキャリアの面積カバー率は70%程度だが、AST SpaceMobileのBluebirdを活用することで同社の面積カバー率は100%になると主張した。

 AST SpaceMobile衛星を活用すれば、「IoTを活用した新しい可能性も」出てくると三木谷氏は説明する。「山岳地帯の災害予防、災害発生時の早期把握も可能になる」「離島や山岳部へのドローンでの配達」といったメリットを強調した。

三木谷浩史氏
三木谷浩史氏

関連情報
楽天モバイル プレスリリース
AST SpaceMobileプレスリリース

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