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楽天モバイル、宇宙から日本全域エリア化「26年にも開始」–スターリンクとの違いを三木谷氏説明

2024.02.16 17:10

小口貴宏(編集部)

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 楽天モバイルは2月16日、宇宙に浮かぶ携帯基地局から日本全土を楽天モバイルエリア化する構想について、2026年内のサービス開始を目指すと発表した。楽天グループが出資する米AST SpaceMobileの地球低軌道(LEO)衛星を利用してサービスを展開する。

左から楽天モバイルで代表取締役会長を務める三木谷浩史氏、AST SpaceMobileでCharman 兼 最高経営責任者(CEO)を務めるAbel Avellan氏

 AST SpaceMobile(以下AST)は、米国に拠点を置く宇宙ベンチャーだ。地球低軌道の人工衛星から地上にブロードバンド接続の提供をめざしており、創業時の資金は楽天グループが提供した。

 ユニークなのは、市販のスマートフォンで衛星通信を利用できる点だ。宇宙から地上のスマートフォンに4Gおよび5Gの電波を送信し、スマートフォンからの電波を宇宙で受信する。まさに「宇宙の携帯基地局」だ。すでに試験衛星「BlueWalker 3」が打ち上げられ、スマートフォンとの5G通信に成功。14Mbpsのダウンロード速度も達成している。

 宇宙から地上をエリア化するため、山間部や島嶼部、海上を含む日本全体をエリア化できる点も強みだ。

「Starlinkとは概念的にも構造的にも異なる」と三木谷氏

 市販のスマートフォンで利用できる衛星ブロードバンドには類似サービスもある。Space Exploration Technologies(SpaceX)の「Starlink」(スターリンク)は、スマートフォンとの直接通信を「Direct to Cell」として2024年内に提供予定。国内ではKDDIが提供することになっている。

KDDIはStarlinkで衛星とスマートフォンの直接通信に挑む

 StarlinkのDirect to Cellと違いについて、楽天モバイルで代表取締役会長を務める三木谷浩史氏は「ASTは概念的にも構造的にも異なる」と説明する。

 「ASTは衛星のサイズが極端に大きい。(Starlinkなど)他社のサービスは小さな衛星を地球低軌道にたくさん打ち上げるコンセプトだが、それでは出力が弱いし、スマートフォンとのブロードバンド接続が弱い」(三木谷氏)

 確かに、すでに打ち上がっている試験衛星 BlueWalker 3は、約64平方メートルの巨大フェーズドアレイアンテナを搭載。これが「耳」の役割となり、地上スマートフォンが発する電波を宇宙で拾うことができる。また、今後打ち上げる衛星はこの数倍大きなアンテナを搭載する。

 ASTでCharman 兼 最高経営責任者(CEO)を務めるAbel Avellan氏は「(自社のシステムなら)90機の衛星でグローバルをカバーできる。(Starlinkなどの)他のシステムは5000機から4万機が必要だが、我々の衛星はサイズが大きく、特許技術のおかげで衛星数が少なくて済む」と説明する。

 今後は四半期ごとに衛星を数機づつ追加し、国内での提供開始時には45機の衛星が日本向けにサービスを提供する。ただし、当初はすべての時間帯で通信が利用できるわけではないこともAvellan氏は示唆した。

当初からデータ通信に対応予定

 なお、StarlinkのDirect to Cellは、2024年の開始当初はSMSしか利用できない。一方のASTは当初からデータ通信や音声通話を利用できる。また、衛星経由で通信していることをユーザーに意識させない構成だという。衛星通信を別料金にするか否かについて三木谷氏は明言を避けた。

 ASTは現時点で楽天モバイルのほか、AT&Tやボーダフォン、Googleなどと戦略的パートナーシップを締結。世界で40の携帯事業者と協力している。

 同社の衛星は約90分で地球を1周するため、1基の衛星で複数の国と地域を時間ごとにカバーすることになる。このため「日本の上空では日本の周波数を出し、他国の上空では他国の周波数を出す」といった高度な制御を実施しているとASTのAvellan氏は明かした。

総務省も協力的、災害時には他キャリアへの開放も検討

 三木谷氏によると、ASTの導入にあたり、電波行政を担う総務省は非常に協力的だという。衛星ブロードバンドは災害時に役立つことが「令和6年能登半島地震」で証明されたが、災害時には衛星通信を他キャリアにも開放することも検討されている。

 楽天モバイルは今後、日本でASTの実証実験を早期に実施すると明かした。

 衛星とスマートフォンの直接通信をめぐっては、これまで消極的だったソフトバンクも積極姿勢に転じている。

(更新)初出時、BlueWalker 3のアンテナサイズの記載に誤りがありました。訂正しお詫び申し上げます。

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