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米大学研究チームの新型3D顕微鏡、ISSに到着–宇宙で細胞を立体的に観察

2025.04.23 15:37

塚本直樹田中好伸(編集部)

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 宇宙で微生物を観察する新型の3D顕微鏡「ELVIS(Extant Life Volumetric Imaging System)」が4月22日に国際宇宙ステーション(ISS)に到着した。

 米ポートランド州立大学(PSU)の研究チームが開発したELVISは、従来の2次元顕微鏡とは異なり、ホログラフィック技術(体積イメージング)を使用して、微小重力環境での微生物や細胞を立体的に観察する。細胞の構造や強度の変化が高精度で把握できるという。

 ISSでELVISが観察するのは、柔軟な適応力を持つ藻類のユーグレナと、深海の冷水を好む細菌のコルウェリア・サイクレリスレアだ。これらの生物が宇宙でどのような遺伝的、構造的変化を起こすのかを分析することで異星環境でも生命が持続可能かを調査する。

 PSUの物理学教授でELVISプロジェクトの主任研究員であるJay Nadeau(ジェイ・ナドー)氏は「宇宙の過酷な環境下でのELVISの成功は、今後の地球外研究だけでなく、地球上のバイオメディカル・微生物学研究にも多大な貢献をもたらす」と述べている。

 ELVISについて、PSUは「従来の2次元顕微鏡の能力をはるかに超える性能を備え、科学者に細胞生物の複雑な構造、体積、そして環境との相互作用をより詳細に観察」できると説明する。

 ELVISプロジェクトで得られる成果は、木星のエウロパや土星のエンケラドゥスといった他の惑星や衛星の生命体を特定するのに役立つ可能性があるという。

 ELVISは、米フロリダ州のケネディ宇宙ステーションから「Falcon 9」ロケットで打ち上げられたミッション「CRS-32」でISSに運び込まれた

ELVISの横に立つPSU博士課程学生Nikki Johnston氏。この革新的なシステムは、宇宙での細胞プロセスの研究方法を進歩させることを目的としている(出典:Jay Nadeau)
ELVISの横に立つPSU博士課程学生Nikki Johnston氏。この革新的なシステムは、宇宙での細胞プロセスの研究方法を進歩させることを目的としている(出典:Jay Nadeau)

関連情報
ISS国立研究所プレスリリース
Space.com

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