だいち4号、衛星間通信で1.8Gbpsを達成--通信時間も拡大

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だいち4号、衛星間通信で1.8Gbpsを達成–通信時間も拡大

2024.10.09 12:00

UchuBizスタッフ

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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月8日、光データ中継衛星(データ中継衛星1号機:JDRS-1)に搭載している「衛星間光通信システム」(Laser Utilizing Communication System:LUCAS)と先進レーダー衛星「だいち4号」(ALOS-4)とのあいだで通信速度1.8Gbpsの衛星間光通信に成功したことを発表した。

 だいち4号7月1日に打ち上げ。7月4日から搭載されている各種機器が軌道上で動作するかどうかを確認する初期機能確認運用を実施。作業の一環として、8月20日からだいち4号をLUCASと対向させた試験を開始した

 だいち4号に搭載された衛星間光通信機器である光ターミナル(Optical Leo Laser Communication Terminal:OLLCT)とJDRS-1に搭載されているLUCASのあいだで相互に捕捉、追尾を確立し、だいち4号にコマンドを送信、だいち4号からのテレメトリデータ取得に成功した。通信光波長1.5μm帯で通信速度1.8GbpsでLUCASまで届いたことを確認した。

 JDRS-1は静止軌道(高度約3万6000km、GEO)を、だいち4号は地球低軌道(高度630㎞、LEO)をそれぞれ周回している。1.5μm帯の波長帯での衛星間光通信(GEO-LEO)の成功は世界初と説明する。

 通信速度1.8Gbpsは、前世代のデータ中継技術衛星「こだま」(Data Relay Test Satellite:DRTS)の通信速度240Mbpsの約7.5倍になる。1.5μm帯の波長帯は地上の光ファイバーで活用されている波長と同じであり、今後主流になると見込まれている。

 LEOを周回する衛星とLUCASの通信が成功したことで通信時間の拡大も見込める。一般的なLEO衛星と地上局のあいだの通信時間は1日あたり約1時間。LUCASでGEO衛星を中継することで通信時間は1日あたり9時間に増えると考えられている。

 LEOを周回する地球観測衛星が地上局と直接通信できないエリアで取得したデータであっても、GEO衛星経由でリアルタイムに地上に通信できることになる。緊急時にはLUCASでGEO衛星を中継して地上から衛星に向けてコマンドを送り、迅速に画像を取得するといったことも期待できる。

 LUCASとだいち4号で衛星間の距離や互いの位置関係がどのように通信品質に影響するのかなどを評価する実証実験を継続して実用化を目指す。国際宇宙ステーション(ISS)に日本実験棟「きぼう」など、高度200~1000kmの軌道上を周回する宇宙機からの観測データや実験データをLUCASで中継して地上局に通信する実証も予定している。

だいち4号に搭載している衛星間光通信の機器光学部(出典:JAXA)
だいち4号に搭載している衛星間光通信の機器光学部(出典:JAXA)

 LUCASの設計と製造はNECが担当。チェックアウト運用もNECが支援している。NECは、通信速度が100Gbps以上という衛星間光通信の装置を米Skyloom Globalと共同で開発している

 衛星間光通信については、米Space Exploration Technologies(SpaceX)が端末を開発、衛星ブロードバンドサービス「Starlink」のコンステレーションbですでに使用しており、通信速度は100Gbpsと言われている。

 だいち4号は、衛星と地上局の間のデータ転送で通信速度3.6Gbpsを記録した。地球観測衛星での通信速度として世界最高性能という。

光データ中継システムの概要。だいち4号で取得された画像データが光データ中継衛星を経由して地上局に伝送される。だいち4号と光データ中継衛星間の衛星間回線は光通信、光データ中継衛星と地上局の間(フィーダリンク回線)は電波(Kaバンド)が用いられる(出典:JAXA)
光データ中継システムの概要。だいち4号で取得された画像データが光データ中継衛星を経由して地上局に伝送される。だいち4号と光データ中継衛星間の衛星間回線は光通信、光データ中継衛星と地上局の間(フィーダリンク回線)は電波(Kaバンド)が用いられる(出典:JAXA)

関連情報
JAXAプレスリリース
LUCAS(JAXA第一宇宙技術部門)

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