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「きぼう」運用のJAMSS、クラウド活用した宇宙からのデータ配信サービスを開発
2024.08.01 15:30
有人宇宙システム(JAMSS)と米Amazon Web Services(AWS)は、クラウドサービスを活用した地球低軌道(LEO)でのソリューション提供に向けて協力合意書を締結した。7月31日に発表した。
今回の合意では、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟(JEM)「きぼう」で培ってきたJAMSSの技術や経験を出発点にAWSのクラウドサービスを経由して、誰もが気軽に宇宙を利用できるソリューションの提供を目指す。JAMSSが運営する宇宙利用を支援するメディア「ASMILLA(アスミラ)」を発展させ、データ配信サービスを含むウェブポータルプラットフォームを構築するという。
多様な宇宙利用ニーズの一つとして、自動化、自律化した宇宙からのデータ配信サービスを提供することで、LEO市場の拡大に好循環を生み出せるとJAMSSは考えている。JAMSSは、データ配信サービスを皮切りに宇宙利用の価値向上に寄与できるソリューションを提供していくことで宇宙利用の計画から実施までをワンストップで提供するトータルサービスプロバイダーを目指すとしている。
今後の提供を予定しているデータ配信サービスは、2030年末のISS退役後(ポストISS)の民間宇宙ステーション(Commercial Space Station:CSS)や低軌道商業プラットフォーム(Commercial LEO Destinations:CLDs)での利用を見据えている。
きぼうでは、さまざまな実験や宇宙飛行士による活動が展開されている。得られたデータは地上に伝送され、ユーザーの目的に応じてさまざまな用途に活用されているという。今後、データ伝送に対するユーザーの多様なニーズに応じたサービスを提供することは、LEO市場の拡大にとって重要になるとJAMSSは考えていると説明する。
JAMSSは「自律的ファイルダンプシステム」(JAMSS Automated File Dump Innovation System:JAFDIS)を開発。2023年に軌道上技術実証をAWSのエッジ端末「AWS Snowcone」で実施した。
きぼうでの活動で得られたデータは通常、米航空宇宙局(NASA)などが運営する「追跡データ中継衛星(Tracking and Data Relay Satellite:TDRS)」を経由して地上にダウンリンクされている。
JAMSSが考案した自律的ファイルダンプとは、軌道上に保存されたファイルを決められたスケジュールに基づいて自律的に地上にダウンリンクするという仕組み。JAFDISは、決められたスケジュールに沿って、利用者ごとに必要な時間帯のみ通信帯域を割り当てられるのが特徴という。複数の通信回線がある場合は、宛先を指定する機能もある。
大容量の実験データや映像ファイルは、軌道上のファイルサーバーに一時的に保管された上で、後からまとめてダンプされる。しかし、JAFDISは、ファイル名を含めディレクトリ構造を維持した状態で圧縮、暗号化して伝送が可能。そのため、利用者は軌道上で保管されたファイルを地上のファイルサーバーに再現されたように利用できるという。
ダウンリンクの際は、通信状況に応じてパケットの欠損が生じるほか、TDRSのように複数の衛星を切り替えながら通信する場合は「ショートハンドオーバー」と呼ばれる数十秒間通信が途絶える時間帯が発生することがある。
JAFDISは、欠損部分を自動で識別し、必要な部分のみを再送、補完する仕組みを搭載。ハッシュ値の一致も自動で確認されるため、利用者の手間がなく、運用の効率化につなげられるという。
2023年6月に実施されたJAFDISの軌道上技術実証では、JAFDISのソフトウェアをISSにあるAWS Snowcone上の「Amazon Elastic Compute Cloud」(Amazon EC2)インスタンス(仮想サーバー)に展開。ユーザーあたり合計1GBのファイルを3ユーザー分作成して、地上にある端末に順次伝送した。データ欠損に伴う自動再送もへながら、指定したスケジュールに従い、5Mbpsという与えられた通信帯域内で全ファイルを地上にある端末で再現できたとしている。
JAMSSは、きぼうを運用するとともに、きぼうの利用を支援する民間企業。1990年に創立。きぼうのほかに、日本が開発した無人の物資補給機「H-II Transfer Vehicle(HTV)」(愛称は「こうのとり」)も運用していた。宇宙飛行士や管制要員の訓練、宇宙実験の実施にも携わっている。
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