中国、小惑星衝突ミッションを2027年に延期か--小惑星を「完全に破壊する」可能性も

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中国、小惑星衝突ミッションを2027年に延期か–小惑星を「完全に破壊する」可能性も

2024.07.18 08:00

塚本直樹田中好伸(編集部)

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 中国による小惑星に宇宙機をぶつけて軌道を逸らすミッションの打ち上げ日が2025年から2027年に延期されたと、海外メディアのSpaceNewsが報じている

 2023年4月、中国は1機の宇宙機を小惑星「2019 VL5」に衝突させ、もう1機が小惑星を観測するミッションを発表した。このような宇宙機による衝突ミッションとしては、米航空宇宙局(NASA)が2022年9月に実施した「Double Asteroid Redirection Test(DART)」がある。

 中国で宇宙開発を担当する中国科学院(CAS)の国家宇宙科学センターに所属するLi Mingtao氏は、2024年7月15日に韓国の釜山で開催された、宇宙科学分野の国際組織である国際宇宙空間研究委員会(Committee On SPace Research:COSPAR)の総会で小惑星衝突ミッションの新たなスケジュールを明かした。理由は明らかにされていない。

 2機の宇宙機は2027年に「長征3号B」ロケットで打ち上げられ、観測する宇宙機は、2029年初頭に小惑星に到着する前に金星をフライバイする。その3カ月後となる2029年4月に衝突する宇宙機が秒速10km(時速3万6000km)の速度で小惑星に衝突する。ミッションのターゲットも2019 VL5とは別の小惑星「2015 XF261」に変更されている。

 ミッションの目的は、高速衝突によって小惑星の軌道を変え、地球との衝突を防ぐ方法を示すことで、惑星防衛への「運動学的な衝突装置」のアプローチを実証することだ。COSPARに出席した科学者の1人は、衛星の衝突によって小惑星が完全に破壊される可能性があると指摘している。

 小惑星のように地球に接近する軌道で周る天体は「地球近傍天体(Near-Earth object:NEO)」と呼ばれる。今回、発表されたスケジュール通りに運べば、欧州宇宙機関(ESA)が発表した小惑星探査ミッション「Ramses」と同じ月に中国は小惑星に宇宙機を衝突させることになる。

 Ramsesは小惑星「Apophis」にランデブーする。Apophisについては、NASAが「Osiris-APEX」で探査する。

 DARTは小惑星衝突から地球を守るための“惑星防衛(プラネタリーディフェンス)”を国際共同で進める「Asteroid Impact and Deflection Assessment(AIDA)」計画として進められた。2024年10月の打ち上げが予定されている欧州宇宙機関(ESA)の探査機「Hera」もAIDAの一環。

 DARTは、小惑星「Didymos」とDidymosを周回する小惑星「Dimorphos」に接近して、Dimorphosに衝突した。Heraは、衝突されたDimorphosがどのように影響を受けたのかなどを観測する予定。

DARTイメージ(出典:NASA / John Hopkins APL)
DARTイメージ(出典:NASA / John Hopkins APL)

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