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古川聡宇宙飛行士が帰国後初のミッション報告–民間企業に移った若田光一氏へのコメントも

2024.06.17 17:54

藤井 涼(編集部)

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 約半年にわたり国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在し、さまざまなミッションをこなしたJAXAの古川聡宇宙飛行士は6月17日、日本帰国後初となるミッション報告会を開いた。ISS滞在中のミッションや過ごし方について語ったほか、報道陣からの質問にも答えた。

古川聡宇宙飛行士

 約12年ぶり2度目のISS滞在となった古川氏。2023年8月26日から2024年3月12日までの199日間をISSで過ごした。また、「宇宙でしか見つけられない答えが、あるから」をテーマに、「きぼう」日本実験棟において、微小重力環境を生かしたさまざまな実験を進めた。

 具体的には、金属やガラスを浮かせて溶かす「静電浮遊炉」、宇宙空間での「立体臓器創出」、撮影用ドローンロボット「Int-Ball2」の活用、「固体燃焼実験装置(SCEM)」を使った燃焼実験、高品質タンパク質の結晶生成実験などに貢献した。

 また、次世代の人材育成や「きぼう」のアジア利用拡大をめざす「ロボットプログラミング競技会」、アジア各国の学生たちが考えた宇宙実験アイデアを実際に宇宙飛行士が試す教育プログラム「Asian Try Zero-G(アジアントライゼロG)」にも協力。学生たちには「彼らの世代がきっと月に定住したり、火星にも行くんだと思う」(古川氏)とエールを送った。

民間宇宙企業へ移った若田光一氏への思いは?

 ISS滞在中には、民間主導のISS滞在ミッションである「Axiom Mission 3(Ax-3)」にも携わった。今後も商業ミッションが増えていくことが予想されるが、そうなった時にJAXAやNASAなど国家の宇宙飛行士の役割は変わるのだろうか。

 この疑問について古川氏は、ISSを“住み込みで働く研究室”に例えながら、「ゲストが1〜2週間来て、同じように住みながら研究実験をしていくのが現在の形」と説明。その上で今後についても「よりそこに慣れたもの(宇宙飛行士)が支援していく、Ax-3ミッションと似たような形になるのではないか」と語り、ISS運用中は大きな変化は起きないと見ているようだ。

 また、古川氏と同い年の宇宙飛行士である若田光一氏は、32年間務めたJAXAを3月末に退職。世界初の民間宇宙ステーションである「Axiom Station」の発展に貢献するため、4月に米Axiom Spaceのアジア太平洋地域における宇宙飛行士 兼 最高技術責任者(CTO)に就任した。

 若田氏が選んだキャリアについて聞かれると、「民間企業ということで立場は変わったが、新しい立場からきっと宇宙開発や有人宇宙開発を強く進めてくれると思っている」と思いを語った。

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