4月11日夜、国際宇宙ステーションから超小型衛星を放出--大学生だけで開発した衛星も

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4月11日夜、国際宇宙ステーションから超小型衛星を放出–大学生だけで開発した衛星も

2024.04.10 16:21

UchuBizスタッフ

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 国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟(JEM)「きぼう」からキューブサット3機が放出される。日本時間4月11日午後5時45分~午後6時15分と同日の午後7時15分~午後7時50分を予定している。放出の様子は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の公式YouTubeチャンネルでライブ配信される予定。JAXAの有人宇宙技術部門が4月10日に公開した。

 1回目の午後5時45分~午後6時15分に放出される(YouTube)のは、パナソニックホールディングスと九州工業大学が開発した「CURTIS」。大きさは3U。

 CURTISは、高密度の回路設計技術や実装技術を活用して、衛星の基本となるバス部を小型化すると同時にミッションごとの機器を格納するミッション部の容積を拡大させた小型技術実証が目的。放熱性に優れているというグラファイト材料技術などで構成されたサーマルマネジメントユニットを活用した回路形成技術も実証する。

 車載カメラや円筒形のリチウムイオン電池、電子回路基板材料といったパナソニックグループで取り扱う製品群の宇宙空間での技術実証も兼ねている。CURTISは、組み立てが容易な衛星として設計した衛星全体の動作も実証する。

CURTIS(出典:パナソニックホールディングス)
CURTIS(出典:パナソニックホールディングス)

 2回目の午後7時15分~午後7時50分に放出(YouTube)されるのは、千葉工業大学が開発した「KASHIWA」とマイクロオービター(東京都千代田区)が開発した「MicroOrbiter-1」。大きさはどちらも1U。

 KASHIWAは、ステレオカメラ撮影での測距技術、「Automatic Packet Reporting System(APRS)」と呼ばれる技術を活用した衛星経由のデータ送受信技術を実証する。地磁気観測データの聴覚情報への変換も実証する。KASHIWAは、宇宙産業分野での高度技術者の育成も目的としている。

KASHIWA(出典:千葉工大)
KASHIWA(出典:千葉工大)

 MicroOrbiter-1は、モノのインターネット(IoT)向け無線通信技術「LPWA(Low Power Wide Area)」に含まれる低消費電力で長距離通信が可能という通信規格「LoRA」を活用。LoRA通信で地上の低消費電力IoTセンサーデータを収集して、地上局経由で送信することが目的。

 地上にある基地局などから衛星に920MHzでのLoRA変調通信、地上の移動する基地局から衛星に399.975MHzでのLoRA変調通信を実験する。新たに開発した衛星用920MHzパッチアンテナの性能も試験する。MicroOrbiter-1も九工大が開発に関わっている。

MicroOrbiter-1(出典:マイクロオービター)
MicroOrbiter-1(出典:マイクロオービター)

 きぼうにある「小型衛星放出機構(JEM Small Satellite Orbital Deployer:J-SSOD)」から放出する。J-SSODは、キューブサット規格(10cm×10cm×10cm)の衛星や50kg級の超小型衛星をきぼうのエアロックから搬出して宇宙に打ち出して軌道に乗せるための仕組みだ。

 キューブサットの放出では、繰り返し利用できる「軌道上装填型衛星放出機構」(JEM Small Satellite Orbital Deployer Resuppliable:J-SSOD-R)を導入している。対象となるキューブサットは打ち上げケースに搭載され、ISS内に滞在するクルーがJ-SSODに移設する。

 放出可能な最大サイズは6U、W6Uとなっている(キューブサット規格=縦10cm×横10cm、高さがそれぞれ1U:10cm、2U:20cm、3U:30cm、4U:40cm、5U:50cm、6U:60cm。W6U:縦10cm×横20cm×高さ30cm。50kg級衛星=55cm×35cm×55cm)。

 J-SSODから衛星を放出したい企業などに対応する窓口はSpace BD三井物産エアロスペースに放出枠の7割が事業移管されている。研究開発や人材育成に加えて、商業利用を目的にした衛星放出も可能になっている。今回のCURTISとMicroOrbiter-1は三井物産エアロスペース、CURTISはSpace BDが担当している。

 Space Exploration Technologies(SpaceX)の無人補給機「Cargo Dragon」に積まれ、日本時間3月22日にやはりSpaceXのロケット「Falcon 9」で打ち上げられた。米航空宇宙局(NASA)がISSへの貨物や物資の輸送を民間企業に委託する「商業物資輸送サービス」(Commercial Resupply Services:CRS)の30回目となる(SpaceX CRS-30:SpX-30)として打ち上げられた。

関連情報
JAXA有人宇宙技術部門公表
SpX-30概要

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