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NASA、火星での試料回収にヘリコプター活用–「Ingenuity」をベースに開発

2022.07.28 14:04

佐藤信彦

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 米航空宇宙局(NASA)は、火星から岩石などの試料を持ち帰る計画「Mars Sample Return(MSR)」において、火星での試料(サンプル)回収作業にヘリコプター2機を活用すると発表した。これまで使用を検討していた回収車「Sample Fetch Rover(SFR)」は、使わないことになった。

 MSRは、2020年7月に打ち上げられ、2021年2月に火星へ到着した探査車(ローバー)「Perseverance(パーシビアランス)」の集めた岩石や堆積物などの試料を地球まで持ち帰る計画。Perseveranceは採取した試料をチューブに入れて地表に置き、次の探査地点へ移動している。MSRでは、その試料入りチューブを何らかの方法で回収し、宇宙船に載せて地球へ送る。

 これまでは、後から火星に到着するSFRが、地表を移動しつつチューブを回収するとしていた。それが現在の計画では、SFRを火星へ送らず、Perseveranceに回収させる。さらに、回収作業のバックアップ用などとして、2機のヘリコプターを新たに投入することになった。

 このヘリコプターは、Perseveranceとともに火星へ送り込まれた「Ingenuity(インジェニュイティ)Mars Helicopter」をベースに開発する。Ingenuityは、火星の薄い大気中でも飛行可能なことを検証するための、二重反転式ローターで飛行する機体。特別な観測機は搭載していない。これまでに多数の飛行を成功させ、火星でヘリコプターが使えることを実証した。

火星で飛ぶIngenuityの想像図(出典:NASA)

 MSRにおいて、Perseveranceとヘリコプターが回収した試料チューブは、これから火星に到着する回収ステーション「Sample Retrieval Lander(SRL)」にまず集められる。そして、ロケット「Mars Ascent Vehicle(MAV)」に積み替えられ、火星表面から火星周回軌道へ投入される。周回軌道では宇宙船「Earth Return Orbiter(ERO)」が待機しており、サンプルを軌道上で受け取って地球へ送る。

 現時点の計画では、EROは2027年秋、SRLとヘリコプターは2028年夏に打ち上げる。試料の地球到着は、2033年の予定。

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