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アクセルスペース小型衛星「PYXIS」、軌道投入に成功–「ファーストボイス」も受信
2024.03.05 12:33
アクセルスペース(東京都中央区)は3月5日、同社にとって10機目となる小型衛星「PYXIS」(ピクシス)の打ち上げと軌道投入に成功したことを発表した。日本時間3月5日早朝に米カリフォルニア州バンデンバーグ宇宙軍基地からSpace Exploration Technologies(SpaceX)の「Falcon 9」ロケットで打ち上げられた。
PYXISが軌道上から発信し、地上で受信した電波「ファーストボイス」の受信も成功したという。今後は搭載された各機器の動作を確認する初期運用フェーズを経て、周回軌道上で実際にミッションに取り組む定常運用フェーズへの移行を段階的に進めていく予定。
PYXISは、2022年4月に発表した新サービス「AxelLiner」の実証衛星初号機になる。PYXISは星座「らしんばん座」、航海用のコンパスを意味している。AxelLinerが今後の衛星活用ビジネスの羅針盤になることを目指して名付けた。
これまでの衛星は、一品ごとの生産が当たり前であり、開発は長期間にわたり、コストもかかっていた。AxelLinerでは、衛星の基盤部分となるバスシステムの汎用化を図り、どの衛星でも利用可能となるように開発を進めている。今回のPYXISで実証する。
今後は、衛星の同時開発も視野に入れた量産体制の構築を通じて、従来では受注から打ち上げまで約3年かかっていた期間を約1年に短縮し、より安価に提供することを目指している。衛星を活用する負担を大幅に軽減するとともに、小型衛星へのニーズの急速な高まりに迅速に応えられるようになると意義を説明している。
AxelLinerでは、ビジネス検証から衛星の開発や製造、試験、打ち上げ、軌道上運用、運用終了後の廃棄までの長く複雑な工程をパッケージ化し、ワンストップでのサービス提供を通じてユーザーエクスペリエンスの革新を実現すると解説している。
2月に同社から出荷されたPYXISは、同社が運用する小型地球観測衛星「GRUS」で構成される地球観測サービス「AxelGlobe」の次世代衛星向け望遠鏡、ソニーグループのIoT向け低消費電力広域通信(LPWA)規格「ELTRES」(エルトレス)の軌道上実証もミッションとなっている。
アクセルスペースはPYXISの実証で得られた知見を生かしてAxelLinerの技術開発を加速させると説明。AxelGlobeで運用する小型衛星でのコンステレーションの機数増強に取り組んでいくと説明している。
PYXISは大きさが125cm×100cm×75cm、質量が約145kg。高度500~600kmの太陽同期軌道(SSO)を周回する。
ミッション終了後に軌道から離脱させるための「膜面展開型デオービット機構」(D-SAIL)と呼ばれる装置も搭載されている。D-SAILは、運用終了後に起動し、大きな膜を展開して大気圏への突入を図る。軌道上にも大気は薄く存在し、膜面が抵抗となり、衛星の軌道運動にブレーキをかける。
深刻化する宇宙ゴミ(スペースデブリ)問題への対策として開発された。アクセルスペースは、今後の衛星にD-SAILを標準で搭載していく予定としている。