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本物の衛星が大都会「東京・日本橋」から出荷されたワケ–アクセルスペースの「PYXIS」搬出に密着

2024.02.05 14:00

小口貴宏(編集部)

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 東京の超一等地である日本橋地区、三越前駅からほど近い路上で、本物の人工衛星(以後、衛星)が運ばれていた。日本の宇宙スタートアップ「アクセルスペース」が開発した汎用衛星バスの実証衛星初号機「PYXIS」(ピクシス)だ。

 汎用衛星バスとは、推進器(スラスター)や通信機能などの「衛星の基本機能」を収めた箱だ。単体でも衛星として機能するが、機器を追加するなどして、さまざまな用途の衛星を短期間で開発するためのベースとなる。

 アクセルスペースは、衛星の開発から打ち上げ、運用までを一気通貫で担うサービス「AxelLiner」(アクセルライナー)の立ち上げを目指しており、汎用衛星バスは同事業の柱となる。

 その実証衛星初号機となるのがPYXISだ。質量は145kg、本体サイズは125cmx100cmx75cm。打ち上げ後、軌道上では汎用衛星バスの実証のほか、地球観測サービス「AxelGlobe」(アクセルグローブ)の次世代衛星向け望遠鏡を試験する。さらに、ソニーグループのIoT向け低消費電力広域通信(LPWA)規格「ELTRES」(エルトレス)の軌道上実証も予定する。

衛星の搬出作業に密着

 アクセルスペースはPYXISの搬出作業をメディア向けに公開しており、作業に密着することができた。以下、その様子をお届けする。

アクセルスペースの本社内で製造されたPYXIS
衛星を頑丈な保護ケースに収納する様子(太陽光パネルが付いているのがPYXIS本体)
収納完了
周囲の養生を済ませ、いざエレベーターで地上へ
エレベーターに乗り込む様子
地上階のエレベーターから出てくる様子
いざ路上へ
運ばれている物がこれから宇宙に向かう衛星だとは、関係者以外誰も思わないだろう
ゆっくりと慎重に進む
中央通りに停車中の大型トラックの荷台へ
トラックに積まれる様子を眺める杉本和矢氏(PYXISのプロジェクトマネージャ)
「ドキドキハラハラした」と感想を語った
追突事故を防止するため、トラックの後ろをバンが追走する

 衛星は関税手続きと航空機輸送を経て、米国の射場には1週間程度で到着する。これに伴ってアクセルスペースの担当者も射場に移動し、打ち上げに向けた事前準備を実施するという。

なぜ日本橋から衛星を出荷?

 なぜ東京の都心部である日本橋から衛星が出荷されたのか。それはPYXISが実証初号機で、アクセルスペースのオフィス内で組み立てられたからだ。当然、オフィス内に衛星を量産する設備はなく、今後はパートナーを選定のうえ、工場での量産化を目指す。

 また、日本橋が宇宙ビジネスの集積地になりつつある点も見逃せない。同地区を再開発する三井不動産は、単にビルを建て替えるだけでなく、その街に新しい産業を根付かせようと取り組んでいる。日本橋といえばライフサイエンス産業の集積で知られるが、宇宙ビジネスをそれに続く日本橋地区の目玉産業にしようとしている。

 そこで、三井不動産は宇宙ビジネス関連企業向けにオフィスや交流スペースを提供しているほか、同地区では1年に1度、宇宙の祭典なるイベント「NIHONBASHI SPACE WEEK」も開催されている。記者目線でも、東京で開催される宇宙ビジネスの記者会見の多くは日本橋地区が会場となっており、「日本橋=宇宙の街」というイメージは着実に根付きつつある。

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