アストロスケール「ADRAS-J」、日曜深夜に打ち上げ--デブリを詳細に調査、世界初に挑戦

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アストロスケール「ADRAS-J」、日曜深夜に打ち上げ–デブリを詳細に調査、世界初に挑戦

2024.02.16 12:08

田中好伸(編集部)

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 アストロスケールは2月16日、商業デブリ除去実証衛星(Active Debris Removal by Astroscale-Japan:ADRAS-J)の打ち上げ時間を明らかにした。日本時間で2月18日午後11時52分に打ち上げる予定。2月8日に打ち上げ日を公表していた。

 ADRAS-JはRocket Labの「Electron」ロケットに搭載され、ニュージーランドのマヒア半島にあるRocket Lab第1発射施設(Launch Complex 1)から打ち上げられる。打ち上げは現地時間で2月19日午前3時52分を予定。打ち上げの様子はYouTubeで配信される(配信開始は日本時間2月18日午後11時10分の予定)。

 アストロスケールは、大型の宇宙ゴミ(スペースデブリ)の除去などの技術実証を目指す宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「商業デブリ除去実証(Commercial Removal of Debris Demonstration:CRD2)」プロジェクトのフェーズ1の契約相手方として選定され、ADRAS-Jを開発している。

 今回のミッションは、2009年に打ち上げられたロケット「H-IIA」の上段に接近、近傍運用(Rendezvous and Proximity Operations:RPO)を実証し、長期間放置された対象の運動や損傷、劣化といった状況を撮影する。

 デブリの状況を明確に調査するのは世界初の試みになる。デブリに安全に接近するとともにデブリの状況を詳細に把握することは、デブリ除去を含む軌道上サービスで不可欠な要素と位置付けている。

 ミッションの完了期限は3月末。当初は2023年11月に打ち上がる予定だったが、Electronの貨物(ペイロード)の軌道投入に失敗したことから延期されていた。

 今回のミッションが成功すれば、実際にデブリを捕獲して大気圏に再突入させるCRD2のフェーズ2実施の足がかりとなる。

 ミッションの対象物体であるH-IIA上段は全長約11m、直径約4m、重量は約4t。今回のミッションの対象物体は自らの位置情報を発信していない“非協力物体”。そのため、RPOで必要な軌道での正確な位置は不明。対象物体のおおよその位置は地上局からの観測データをもとに判断するしかない。

 しかし、その地上からの観測による位置情報は、軌道上での観測ほど正確ではないという。その限られた情報をもとに距離を詰めていく必要がある。

 RPOミッション成功の鍵となるナビゲーションセンサーやランデブー機能など、強化された技術を搭載。RPOや航法(ナビゲーション)に最適化したセンサーやカメラを超長距離を含む複数の距離範囲で使用する。

 センサー群のシームレスな切り替えもミッション成功のための重要な要素という。例えるなら、高速で移動する乗り物に乗りながら、特定の物体を望遠鏡、双眼鏡、虫眼鏡を切り替えて観察するようなものと説明している。

 ADRAS-Jは、相対的に自らの位置を制御するための斜め向きの8本の推進器(スラスタ)と、効率的に大きな推力を生んで大きく軌道を変更するための真っ直ぐな4本のスラスタを使い分けることでダイナミックかつ繊細な動きが可能という。本体サイズは、約830×810×1200mm(太陽光パネル展開時の幅は約3700mm)。重量は約150kg。

デブリに近付くADRAS-Jのイメージ(出典:アストロスケール)
デブリに近付くADRAS-Jのイメージ(出典:アストロスケール)

関連リンク
ADRAS-Jミッション
CRD2概要

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