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月や火星での人工重力施設、京大と鹿島が共同研究–惑星間移動システムも検討

2022.07.07 17:43

佐藤信彦

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 鹿島建設と京都大学は、人類が月や火星で生活する未来を想定し、地球と同等の重力が生ずる居住施設や惑星間移動用の交通システムなどを共同で研究(PDF)していく。

 月や火星の重力は地球より小さいため、そこで暮らす人は低重力の環境で長期間にわたって活動する。こうした状況は、人体に悪影響を及ぼすおそれがあるうえ、現地で誕生した子供の正常な発育も現時点では保証できない。さらに、地球に帰還した際には、筋力の低下により活動が困難になってしまう。

 そこで、月面や火星面でも地球と同程度の重力を発生させられる人工重力居住施設「ルナグラス」「マーズグラス」を検討する。この人工重力は、施設を回転させることで生ずる遠心力を利用する想定だ。

遠心力で疑似的に重力を発生(出典:鹿島)
遠心力で疑似的に重力を発生(出典:鹿島)

 ルナグラスやマーズグラスの内部は、人間の生存に最低限必要な空気と水、食料、エネルギーを供給する設備に加え、地球の生態系システムをごく小さな規模で再現する「コアバイオーム」も作る計画。

コアバイオームは地球の生態系の縮小したものを再現(出典:鹿島)
コアバイオームは地球の生態系の縮小したものを再現(出典:鹿島)

 月や火星での生活が定着し、経済活動が始まると、ビジネスや観光で惑星間を移動する必要性が出てくる。そのために、地球の鉄道技術を発展させた交通システム「ヘキサトラック」を検討する。

 地球や月、火星を結ぶヘキサトラックを構成する、人間の乗る「スペースエクスプレス」は1台が新幹線の車両サイズに収まる大きさで、6両編成とする。

 レール上を走行可能で、月や火星の表面からカタパルトで射出され、必要に応じてロケットエンジンで加速して重力圏を脱出できる。飛行中は、ルナグラスやマーズグラスと同じく、回転による人工重力を発生させ、地球と同程度の重力を保つ。

月面からスペースエクスプレスを射出(出典:鹿島)
月面からスペースエクスプレスを射出(出典:鹿島)

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