JAXA、月周回有人拠点「ゲートウェイ」の利用アイデアで意見を募集

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JAXA、月周回有人拠点「ゲートウェイ」の利用アイデアで意見を募集

2024.01.15 08:00

UchuBizスタッフ

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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の有人宇宙技術部門は、「Artemis」計画の一環である月周回有人拠点「Gateway」をどのように利用するかについての意見募集を2023年12月15日から開始した。Gatewayの利用を検討、利用に関心がある研究機関や企業からの意見を待っている。回答期日は3月31日まで。

 Artemis計画は、米航空宇宙局(NASA)を中心に月探査とその後の火星有人着陸に向けたもの。Artemis計画にとって初めてのミッションとなる「Artemis I」は、宇宙船「Orion」を無人で打ち上げて月軌道を周回させて、地球に帰還させることが目的。Artemis Iは2022年11~12月に成功している。

 第2弾の「Artemis II」では宇宙飛行士がOrionに乗り込んで月を周回、第3弾の「Artemis III」は宇宙飛行士が月の南極付近に降り立つ。Artemis IIとArtemis IIIは延期が先頃正式に発表され、Artemis IIは2025年9月に、Artemis IIIは2026年9月に延期となった。

 2025年以降に建造開始を目指しているGatewayは、月と火星に向けた中継基地であり、米国の提案のもとに開発が進められていて、日本は居住機能や物資補給での貢献を予定している。

 質量が現在の国際宇宙ステーション(ISS)の6~7分の1というGatewayは、将来的に4人の宇宙飛行士が年間30日程度滞在することが想定されている。Gatewayは、最も近いところ(近月点)で高度約4000km、最も遠いところ(遠月点)で高度約7万5000kmで月の北極と南極を周回する月長楕円極軌道(Near Rectilinear Halo Orbit:NRHO)に乗る。

 NRHOは、軌道面が常に地球を向いていることで地球との通信を常時確保可能。地球からのNRHOへの到達エネルギーは月の低軌道までの70%程度と輸送コストが比較的小さいと考えられている。月の南極が見えている時間が長いことから、月の南極探査の通信中継としてもNRHOは都合がいい軌道とされている。

Gateway軌道(出典:JAXA Gateway利用概要説明資料)
Gateway軌道(出典:JAXA Gateway利用概要説明資料)

 Gatewayは、電気・推進エレメント(Power and Propulsion Element:PPE)、居住・ロジスティクス拠点(HAbitation and Logistics Outpost:HALO)、国際居住棟(International HABitation module:I-HAB)などで構成される。

 日本は、二酸化炭素(CO2)や微量ガスの除去、酸素分圧制御など、I-HABの中核となる生命維持や環境制御のシステムを担当。ISSへの無人の「宇宙ステーション補給機(H-II Transfer Vehicle:HTV)」(愛称「こうのとり」)で培った技術を活用した、現在開発中の「新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)」での物資補給、HALOへのバッテリー供給なども日本が担当することになっている。

Gateway構成と日本の役割(出典:JAXA Gateway利用概要説明資料)
Gateway構成と日本の役割(出典:JAXA Gateway利用概要説明資料)

 2023年3月の米大統領予算教書(PDF)で発表されたスケジュールによると、Gatewayの初期構成要素となるPPEとHALOは2025年頃に打ち上げられる予定。だが、Artemis IIとArtemis IIIの延期を考えると、この予定は今後後ろ倒しになる可能性がある。

2023年3月に発表されたArtemis計画の大まかなスケジュール(出典:NASA FY2024予算教書)
2023年3月に発表されたArtemis計画の大まかなスケジュール(出典:NASA FY2024予算教書)

 Gatewayは、実験装置の搭載場所や使えるリソースがISSのように豊富ではないことから、搭載場所やリソースは参加する各極の提案をもとに協議しながら搭載する装置の場所を決める。そのため、参加する各極で成果やデータも共有することが原則と説明している。

GatewayとISSの比較(出典:JAXA Gateway利用概要説明資料)
GatewayとISSの比較(出典:JAXA Gateway利用概要説明資料)

 国際協調が大前提となるGatewayでは、搭載する実験装置やデータ利用研究の提案を受ける公募方法なども参加極間で協議を進めている。各領域の専門家で構成されるワーキンググループで議論し、ワーキンググループでの議論をもとにGateway国際パートナー間調整フォーラム(Gateway Utilization Coordination Panel:GUCP)で検討案を統合して、15年間の長期利用戦略(15-Year Outlook)を検討する。ワーキンググループの対象領域は以下の9つ

  1. 月を対象とする科学:Gatewayからの月の科学研究
  2. 太陽物理・宇宙放射線:太陽物理学の調査をして、Gatewayの宇宙環境を理解
  3. ダスト研究:Gateway近傍の月の砂や塵(レゴリス)、惑星間塵、恒星間塵などの微粒子環境に関する科学や工学、運用に貢献する研究
  4. 天文物理:Gatewayからの天体物理学研究
  5. 各種の技術実証:深宇宙で運用できる宇宙船技術の経験拡大
  6. 生命医科学:深宇宙環境での宇宙生物学や生命科学の研究
  7. 健康管理技術:地球低軌道以遠での安全で生産的な有人飛行を支援する方法の知識獲得
  8. 教育:Gatewayでの活動に関連する教育アプローチとコンテンツの開発
  9. 広報:Gatewayでの活動を認識してもらうためのアプローチの開発

 Gatewayを利用するミッションの選定ポイントとしては、Gateway特有の環境を利用できること、月やISSでの利用と相乗効果が期待できることを挙げている。国際的に優位性があったり、波及効果が高かったりといったこと、国際協働の利用を促進できることも選定ポイントと解説している。

 Gatewayに参加する日米欧加の4極の研究者を対象にしたタウンホールミーティングが日本時間2月1日午前5~7時にオンラインで開催される。Artemisの概要やGatewayの機能や実験での利用機会が紹介される。Gatewayの科学利用についても意見を交換できる予定。

現在想定されているミッション選定の流れ(出典:JAXA Gateway利用概要説明資料)
現在想定されているミッション選定の流れ(出典:JAXA Gateway利用概要説明資料)

関連リンク
JAXA有人宇宙技術部門Gateway解説
Gatewayプログラム概要
Gateway利用概要説明資料(PDF)
Gateway科学利用アンケート

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