ニュース

ISS内の化学汚染、一般家庭を上回る–高いPFAS濃度、ナノプラスチックも浮遊か

2023.08.10 13:22

塚本直樹

facebook X(旧Twitter) line

 国際宇宙ステーション(ISS)における化学汚染の実態が明らかとなった。今回の調査は、ISSの空気ろ過システムから収集された粉塵を基に行われたもので、この種の研究としては初めてである。

(出典:NASA/ Robert Lea)

 英バーミンガム大学のStuart Harrad教授のレポートによると、ISSの粉塵の化学物質の濃度は、米国の一般家庭の中央値をしばしば上回っている。特に、有機フッ素化合物(PFAS)や残留性有機汚染物質(POPs)の濃度が高いことが確認された。

 これらの化学物質は、電気や電子機器、建築材料、家具の生地など、多くの製品で使用されている。ISS内では、空気が1時間に8-10回再循環されているため、化学物質の除去が十分に行われていない可能性がある。

 また、高い放射線の環境下では、プラスチック製品が劣化しやすく、微重力の中でマイクロプラスチックやナノプラスチックが空中に浮遊する可能性がある。このため、ISSの粉塵の化学的組成は、地球の室内環境とは異なる可能性が高い。

 Harrad教授は、ISSの粉塵から検出された化学物質の濃度は、地球上で通常見られる範囲内であるとも指摘している。

 なお、ISSでは多くの科学実験が実施されており、一般家庭と比べて化学汚染が進行している事自体に驚きはないかもしれない。しかし、同報告の目的は「ISSの環境がクルーの健康にどのような影響を与えるか」であり、長期間の宇宙滞在が人類に与える影響は、人類の宇宙進出における重要な研究テーマとなっている。

関連リンク
EurekAlert!

Related Articles