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「HAKUTO-R」の月面着陸が成功しなかった理由は?–ispaceが会見で説明
2023.04.26 17:08
ispace(東京都中央区)は4月26日、民間月探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション1の月着陸船(ランダー)が月着陸に失敗したことを発表した。民間資本による世界初の月着陸は残念な結果となった。
4月26日午前2時にランダーとの通信が確立できないことを明らかにした。その後午前8時にランダーとの通信が回復できない状態が続いていることを説明。ミッション1で月面着陸を確認する「サクセス9」の完了は困難と判断した。
ミッション1のランダーは2022年12月にSpace Exploration Technologies(SpaceX)のロケット「Falcon 9」で打ち上げられた。ミッション1では、打ち上げから月面着陸までの間に10段階のマイルストーンを設けて、マイルストーンごとの成功基準(サクセスクライテリア)を設定している。
ミッション途中で課題が発生して、すべてのマイルストーンを達成できない可能性もあるが、その事象だけを捉えて単なる失敗と評価せずに、発生した課題と、それまでに得られたデータやノウハウなどの成果を正確に把握して、2024年に予定されているミッション2、2025年に予定されているミッション3につなげていくことが持続可能な技術進化と事業モデルに必要と解説している。ミッション1での10のマイルストーンは以下の通り。
- 打ち上げ準備の完了
- ランダーのすべての開発工程を完了
- 打ち上げロケットへの搭載が完了
- 打ち上げと分離の完了
- ロケットからランダーの分離が完了
- ランダーの構造が打ち上げ時の過酷な条件に耐えられることを証明し、設計の妥当性を確認するとともに、将来の開発やミッションに向けてデータを収集
- 安定した航行状態の確立
- ランダーとの通信を確立し、姿勢の安定を確認するとともに、軌道上で安定した電源供給を確立。ランダーの基幹システムとペイロードに不備がないことを確認
- 初回軌道制御マヌーバの完了
- 初回の軌道制御マヌーバを実行、ランダーを予定軌道に投入するとともに、主推進系と誘導制御系の動作を確認
- 深宇宙航行の安定性を1カ月完了
- 1カ月間ノミナルクルーズと軌道制御マヌーバを実行し、ランダーが安定して深宇宙航行が可能であることを実証
- 月周回軌道投入(Lunar Orbit Insertion:LOI)前の深宇宙軌道制御マヌーバの完了
- 太陽の重力を利用したすべての深宇宙軌道制御マヌーバを完了し、月周回軌道投入マヌーバを完了。ランダーの運用能力と航行軌道計画を実証
- 月重力圏への到達/月周回軌道への到達
- 最初の月周回軌道投入マヌーバによるランダーの月周回軌道投入の完了。ランダーと貨物(ペイロード)を月周回軌道に投入する能力を実証
- 月周回軌道上ですべての軌道制御マヌーバの完了
- 着陸シーケンスの前に計画されているすべての月軌道制御マヌーバを完了
- ランダーが着陸シーケンスを開始する準備ができていることを実証
- 月面着陸の完了
- 月着陸を完了させ、今後のミッションに向けた着陸能力を実証
- 月面着陸後の安定状態の確立
- 着陸後の月面での安定した通信と電力供給を確立し、ペイロード運用能力を実証
ミッション1では、これまでに「サクセス8」までを達成しており、「サクセス9:月面着陸の完了」「サクセス10:月面着陸後の安定状態の確立」が残されていた。
ミッション1のランダーの着陸シーケンスは6つの段階で構成され、これらの制御はすべて自動化されている。