ニュース

小型月着陸実証機など搭載の「H-IIA」47号機、8月以降に打ち上げ

2023.03.31 18:24

飯塚直

facebook X(旧Twitter) line

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3月31日、ロケット「H-IIA」47号機の打ち上げを8月以降で調整していると発表した。H-IIA47号機は、X線分光撮像衛星(XRISM)と小型月着陸実証機(SLIM)を搭載する。

 XRISMとSLIMは、宇宙基本計画工程表で2023年度初めの打ち上げ時期を想定。SLIMは、月と太陽、地球の位置関係から月へ向かう軌道に投入できる期間が限られ、月へ向かうために通常より多い推進薬の充填が必要であることから、打ち上げ準備作業を3月中にも開始する計画だった。

 H-IIAの後継である新型基幹ロケット「H3」の試験機1号機(Test Flight No.1:TF1)の打ち上げ失敗に関する原因究明活動を進めていることから、3月からの打ち上げ準備作業に入ることを中止。H-IIAへの技術的な影響を詳細に評価した上で次の打ち上げに臨むため、H-IIA47号機の打ち上げについては、月軌道投入可能期間となる8月以降で調整することになった。

XRISM(出典:JAXA)
XRISM(出典:JAXA)

 XRISM(X-Ray Imaging and Spectroscopy Mission)はX線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)の後継。ASTRO-Hは、姿勢制御系に不具合があったことから約1カ月で観測を中断した。

 ASTRO-Hの不具合の直接の要因と背後にある要因を調べ上げ、再発防止のための対策を講じたXRISMは、再発防止策に基づいて計画されたプロジェクトとなり、ASTRO-Hが目指していた科学成果を早期に回復し、世界に届けることを目指している。

 XRISMは、ASTRO-Hの成果や研究の進展をもとに、銀河を吹き渡る風である「高温プラズマ」のX線精密分光撮像を通じて、物質やエネルギーの流転を調べ、天体の進化を解明するのが目的。JAXAの宇宙科学研究所(ISAS)にとって7番目のX線天文衛星計画となる。

 新たな国際X線観測計画として、米航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)をはじめとした関係機関と密接に協力しながら、開発を進めているという。

SLIMの着陸イメージ(出典:JAXA)
SLIMの着陸イメージ(出典:JAXA)

 SLIM(Smart Lander for Investigating Moon)は、将来の月惑星探査に必要なピンポイント着陸技術を研究し、小型探査機を活用して月面で実証する計画。人類が進める重力天体探査は、従来の「降りやすいところに降りる」探査ではなく、「降りたいところに降りる」探査へと大きな転換を果たすことになると説明する。

 将来月面からのサンプルリターンを実施する場合、月面からSLIM級の大きさのリターン機を打ち上げれば、「はやぶさ」などと同程度の大きさのカプセルを地球に送り返せるようになるとしている。ISASのメンバーを中心に、全国の大学などの研究者が集まり、一体となって検討、開発を進めているという。

 SLIMには、JAXAやタカラトミー、ソニー、同志社大学が共同で開発した、月面を移動できる探査ロボット「Lunar Excursion Vehicle 2(LEV-2)」(愛称「SORA-Q(ソラキュー)」)が搭載される予定。一面が「レゴリス」と呼ばれる細かな砂に覆われ、重力が地球の6分の1しかない月面で活動可能な超小型ロボットの探査技術を実証する。将来の有人月面探査に向けて、自動運転技術や走行技術の検討に必要な月面データを取得も目指している。

Related Articles