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ホンダ、月面で電力を供給する「循環型再生エネルギー」でJAXAと研究開発

2023.01.19 16:44

飯塚直

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 本田技研工業(ホンダ)は1月19日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と、月面探査車両の居住スペースとシステム維持に電力を供給するための研究開発契約を締結したと発表した。同契約は「有人与圧ローバー再生型燃料電池システムの概念検討および機能要素試作」についての契約となる。

 再生型燃料電池システムとは、水を電気分解して水素と酸素を作る「水電解システム」と、水素と酸素から電気を作り出す「燃料電池システム」を組み合わせたもの。同社では、独自の高圧水電解システムを採用しており、「循環型再生エネルギーシステム」と呼んでいる。

月面での循環型再生エネルギーシステムの活用イメージ(出典:ホンダ)
月面での循環型再生エネルギーシステムの活用イメージ(出典:ホンダ)

 同社の高圧水電解システムは、通常必要とされる水素を圧縮するためのコンプレッサーが不要なためコンパクトであると説明。循環型再生エネルギーシステムは、蓄電池よりも質量あたりのエネルギー密度が高いため、同じ量のエネルギーを蓄えておくために必要な質量が蓄電池より小さいという特徴がある。

 これらにより、循環型再生エネルギーシステムは、宇宙輸送で大きな課題である積載容量や質量の低減化にも貢献できるという。

 今回の契約締結で同社はJAXAから委託を受ける形で概念を検討し、2023年度末までに初期段階の試作機である「ブレッドボードモデル」を製作するという。宇宙で使用するシステムは、開発段階に応じて「ブレッドボードモデル」→「エンジニアリングモデル」→「フライトモデル」と試作機を製作し、開発を進めていく。

 同社の循環型再生エネルギーシステムは、太陽エネルギーと水から継続的に酸素や水素、電気を製造することを想定。月面で使用する場合、昼の間に太陽光発電で発電した電気を使って高圧水電解システムで水を電気分解し、酸素と水素を製造してタンクにためるシステムとなる。夜になったら、ためた酸素と水素を使って発電し、居住スペースに電力を供給するという。

 同社は、水素技術の研究開発に取り組んでおり、2002年には世界で初めて燃料電池自動車のリース販売を開始。高圧水電解システムを使った、スマート水素ステーションを開発、設置してきた。循環型再生エネルギーシステムは、これらの技術を活用して実現を目指すという。

 2020年11月には、JAXAと循環型再生エネルギーシステムの共同研究協定を締結しており、月面での活用に向けた研究を進めている。

循環型再生エネルギーシステムの仕組み(出典:ホンダ)
循環型再生エネルギーシステムの仕組み(出典:ホンダ)

 日本も参加する宇宙探査プロジェクト「Artemis」計画では、2020年代後半に長期の有人月面探査が計画されている。長期探査のために人が月に滞在する場合、「月面探査車両を走らせる電力」と「車両内で人が生活するための電力」が必要となります。

 月面で最も日照割合が少ない地域では、14日間の昼と14日間の夜が繰り返す。車両内で人が生活するための電力については、太陽が出ている昼の間は太陽光発電で発電し、居住スペースに電力を供給できる。太陽が出ない夜の間は、別の方法で電力を確保する必要がある。

 蓄電池を月面に持ち込み、太陽光発電で作った電気をためておく、という方法もあるが、そのために必要な大量の蓄電池を地球から月へ持ち込むには輸送コストがかかりすぎるという問題が指摘されている。

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