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天地人、国交省の事業に採択–深層学習で地表温度計測の精度を向上
2022.11.18 18:35
JAXAベンチャーである天地人(東京都港区)は11月18日、国土交通省の「令和4年度 交通運輸技術開発推進制度」で提案した「深層学習を用いた高時空間分解能の地表面温度プロダクトの改良と道路等の都市インフラ分野への実装」が採択されたと発表した。
同社は、2021年11月に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「SBIR推進プログラム」で研究開発テーマ「静止衛星ひまわりのデータを用いた社会課題解決に貢献する新たなサービス開発」が採択され、開発初期段階(フェーズ1)として、独自の地表面温度プロダクトの開発に取り組んでいる。
SBIR(Small Business Innovation Research)推進プログラムは、政府が提示する研究開発テーマに取り組む中小企業やスタートアップ企業の研究開発と事業化を全3フェーズで支援することで、社会課題を解決すると同時に、我が国の産業競争力強化を目指すというもの。
2022年4月には「深層学習による高精度・高頻度な地表面温度プロダクト」の開発に成功。気象衛星「ひまわり」の2.5分という細かな時間間隔と熱赤外域の観測バンドに着目し、従来2日に1回だったものを2.5分間隔という極めて高頻度という地表面温度プロダクトを開発している。
国交省の交通運輸技術開発推進制度への提案は、実用化開発段階(フェーズ2)として、「深層学習による高精度・高頻度な地表面温度プロダクト」の改良と都市インフラ分野への実装を目指したものになる。
研究の実施内容としては、地表面温度の時間分解能の向上として、地表面温度の推定精度への影響が大きい地表面射出率の設定方法を見直し、フェーズ1で開発した地表面温度プロダクトの精度向上を目指すという。
深層学習による独自プロダクトの改良として、商用衛星画像から取得した、詳細かつ高スペクトル分解能のデータを活用。雲域における地表面温度の欠損値補完と高解像度処理を実施。実用化レベルの地表面温度プロダクトを開発するとしている。
同社によると近年、地球温暖化と都市化に伴い、都市部でヒートアイランド現象が顕在化してきているという。都市化の進む大都市では、気温が長期的に上昇。東京の年平均気温の上昇率は、100年で3.3℃となっている。
ヒートアイランド現象に関するさまざまな施策が実施されているが、同社は、こうした取り組みの効果や長期的な気温の変化傾向をモニタリング、評価することが重要だと説明している。
同社のプロダクトは、ヒートアイランド対策や環境負荷軽減に向けた取り組みの効果検証のための基礎データとしての利用が見込まれているという。
ひまわりを活用した、同社の地表面温度プロダクトは、日本域だけではなく、南半球のオーストラリアもカバーしていると説明。2022年にパースの北に位置する西オーストラリア州の沿岸の町オンズローで最高気温50.7℃という記録的な熱波がニュースになったが、同社ではこうした地球規模の課題解決への貢献も目指すという。