特集
海外企業と提携して宇宙ビジネス拡大図る日本企業の狙い
2022.08.10 08:00
宇宙ビジネスへのアプローチは起業や新規事業だけではない。日本企業が海外企業と提携して、新しい宇宙ビジネスを展開したり、参入したりするケースも増えている。どういった経緯から提携したのか、今後どのようなビジネスを展開していくのか――。
7月19日から3日間開催された、アジア最大級という宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE 2022」のパネルディスカッション「国際連携が生み出す新たな宇宙ビジネス」では、そうした企業の取り組みが深掘りされた。登壇したのは以下の4人。
- 鬼塚慎一郎氏=ANAホールディングス グループ経営戦略室 事業管理部宇宙事業チーム リーダー
- 倉原直美氏=インフォステラ 共同創業者 代表取締役 最高経営責任者(CEO)
- 高尾篤史氏=丸紅 航空宇宙・防衛事業部 航空第三課 アシスタントマネージャー
- 宮嶋洋治氏=三菱重工業 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 営業部 課長
モデレーターは一般社団法人 SPACETIDEでSpace Enabled Worldプログラムマネージャーを務める藤原寛朗氏が担当した。
本気のビジネスですぐに飛びつくのはダメ–ANA
三菱重工は、2022年3月18日に商用宇宙ステーション「Orbital Reef(オービタルリーフ)」開発を目的に米Sierra Spaceと提携した。協業理由を聞かれた三菱重工の宮嶋氏は「弊社は数年来、打ち上げ総合サービス事業者としてSierra Spaceと付き合いがあった。今回の開発はSierra Spaceのビジョンを踏まえたパートナーシップを構築したいとの提案から、MOU(Memorandum of Understanding:法的拘束力を持たない覚書)を結んだ」と説明した。
ANAホールディングスは、2021年11月5日に米Virgin Orbitと、人工衛星打ち上げ事業にかかる基本合意書を締結した。同様に質問されたANAの鬼塚氏は「大手企業には(新規事業を提案する)持ち込み案件が多い。本気でビジネスするには、すぐに飛びつくレベルではダメだと感じている。弊社が宇宙ビジネスに進出する際に提携先をリストアップしたところ、その一つにVirgin Orbitがあった。SPACETIDEを通じて先方を紹介していただき、互いの距離を近づけた」とコミュニティーの有用性を強調した。
周回衛星向け地上局共有プラットフォーム「StellarStation」を開発、運用するインフォステラはこれまでの多くの提携先を獲得した。その理由について、インフォステラの倉原氏は「当初は本当に苦労した。誰しもがアンテナ設備を所有しているわけではない。(逆転の発想で)ソフトウェア開発に注力し、パートナー探しに尽力した。最近は『一緒にやろう』と声がけいただくことも増えている」と初期段階の苦労を語った。
丸紅は、小型衛星用推進装置(スラスター)を開発、製造する米Phase Fourと2020年5月15日に提携、小型衛星打ち上げサービスを提供する、イタリアのD-Orbitとも提携している。