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ハッブル望遠鏡の功績を振り返る–後継機登場後も活躍する見込み
2022.07.27 11:36
地球の大気の340マイル(約547.2km)上の軌道上を周回し、目に見える宇宙を観察できるように構築されたハッブルと異なり、JWSTは地球から100万マイル(約160万9000km)離れた位置を飛行し、目に見えないものを観察できるように設計されている。このような画像を撮影するため、JWSTは人間の目には見えない光(赤外線としても知られる)を発する宇宙の物体を探す必要があった。世界中の人々が高揚を感じたのは当然のことだった。人類は外宇宙と人類自身について、再び新たな視点を得たのだ。
天文学にとって栄光の1週間だったといえる。
しかし、この数日間の祝賀ムードの中で、私たちがハッブルに対してしてしまったことを考えた方がいいかもしれない。
私たちは、JWSTの美しい「現在」の進化を強調するために、かつては先駆的で人々に愛された望遠鏡を公の場で「過去」のモデルと位置づけてしまった。筆者もその罪を犯した。何百もの記事やRedditのスレッド、Twitterの投稿も、まさにそうした見方を紹介した。これには正当な理由もあるが、それによって、誤った物語が作り出されてしまったようだ。ハッブルはもう終わりだということが暗示されているように感じる。
だからこそ、必ず公開されるであろうJWSTの素晴らしい画像の数々を楽しみに待っている今、ハッブルがなければ、NASAの「現在」の画像にアクセスすることもできなかった、ということをよく考える必要がある。「研究の全体像は、ハッブルが見たものによって定義されている。そして、私たちは、もう少し多くのものが見えたら、どんなことが分かるのだろうか、と思索するようになった」(Caplan氏)
ハッブルはもう役目を終えたように感じられるかもしれないが、そんなことは決してない。
コーネル大学の天文学者であるNikole Lewis氏は、「ハッブルは今後も絶対に必要だ」と話す。「現に、私は今、ハッブルに関する大規模な資金プログラムの予算をまとめようとしているところだ」(同氏)。Lewis氏は、ハッブルにあって、JWSTにはないものを追い求めている。同氏は、太陽系外惑星を研究しており、可視光線と紫外線の波長を使用して、異世界の雲や霞の謎を解き明かすつもりだ。JWSTは可視光線と紫外線を観測しない。「これらの波長には多くの重要な情報がある」
JWSTは強力な性能を備えているが、Z軸ではなく、X軸やY軸に沿って移動する銀河の観測に最も適しているのは、依然としてハッブルである。銀河の「地球に向かう」動きや「地球から離れる」動きは、JWSTの専門である赤方偏移で非常に簡単に測定できるが、「横方向」の動きはそれよりも難しい、とCaplan氏は述べた。
実は、私たちが銀河についてかなり詳しく理解することができたのは、ハッブルのそうしたユニークな能力のおかげだった。現在、多くの銀河は衝突する軌道をたどっている。
アンドロメダ銀河(ハッブル宇宙望遠鏡の名前の由来となったEdwin Hubble氏は1923年、天の川銀河の外側にも銀河が存在する証拠として、アンドロメダ銀河を提示した)を何年も見つめて、ピクセルごとの光の移動を測定することで、ハッブルは、アンドロメダ銀河が単に天の川銀河を周回しているだけではないことを私たちに教えてくれた。Caplan氏は、「これら2つの銀河は実際に衝突するだろう」と説明した。JWSTではそれを発見できなかったかもしれない。
とはいえ、インターネットでは、JWSTが宇宙の深遠部を撮影したカラフルな画像の数々が今後も公開され続けるだろう。しかし、JWSTはハッブルに取って代わるものではなく、後継の宇宙望遠鏡だということを覚えておくべきだ。JWSTは今後もハッブルと併用される。ハッブルがなければ、JWSTは存在しないだろう。
Van Arsdall氏は、「JWST科学プログラムは、30年以上にわたるハッブル科学の遺産を利用することができる」と述べている。JWSTは、ハッブルという先人が積み重ねた知恵や発見を活用できる状況にあるが、ハッブルが登場したときは、まったく何も分からない状況だった。