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NEC、宇宙空間で通信速度10Gbpsを実現する光通信機を開発–ETS-9で動作確認

2022.09.06 07:00

飯塚直

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 NECは9月5日、宇宙空間で世界最高水準という通信速度10Gbpsで動作する光通信機向けの技術を開発、試作品を製造したと発表した。

 宇宙光通信では、2017年に「欧州データ中継システム(European Data Relay System:EDRS)」の中で、1.06μm帯の信号光波長による通信速度2Gbpsの静止衛星-低軌道衛星間通信を開始するなど、これまで欧州が先行している。

 日本では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が「光衛星間通信システム(Laser Utilizing Communication System:LUCAS)」を2020年に打ち上げている。将来の高速化を視野に、地上用の高速な光通信システムで普及している1.55μm帯を使用し、静止軌道衛星-低軌道衛星間の2Gbps光通信を実現しているという。

 同社では、JAXAと契約し、レーザー光を活用して宇宙空間で大容量データ伝送を可能とするLUCAS向けの光通信装置として、静止衛星用と地球観測衛星用の2種類を開発している。

 今回開発した10Gbps光通信機は、LUCAS向け同様に1.55μm帯を使用。静止軌道衛星-地上間、静止軌道衛星-低軌道衛星間に相当する約4万kmの長距離システム向けに最適な誤り訂正符号化技術を採用。受信感度改善のための各種施策を適用し、回線成立条件の緩和につなげている。

 同社によると、長期間運用が前提の静止軌道衛星は、搭載する各種装置に高い信頼性が必要とされているという。しかし、10Gbpsという超高速動作領域では、宇宙環境での動作保証がされた部品が少ないため、地上システム向け光部品や高周波部品について、宇宙システムでの適用を目的とした選別手法と実装手法を開発した。

 光通信の宇宙システム利用については、EDRSに加え、静止軌道衛星ベースの汎用衛星通信放送システムの高速化(High Throughput Satellite:HTS化)や低周回軌道衛星ベースの衛星コンステレーションでのネットワーク構築手段として注目されている。

 HTSにおけるマルチユーザーRFリンクとの親和性やその先のネットワーク化、地上通信システムとのシームレスな接続に向け、地上システムで標準的に使用されるEthernetをインターフェースとして採用している。

 今回の技術開発は、HTSにおける衛星-地上間フィーダーリンクへの適用を念頭に置いたものであり、高速化に加えマルチユーザーRFリンクとの親和性を念頭に置いて進められているという。

開発した10Gbps光通信機(出典:NEC)
開発した10Gbps光通信機(出典:NEC)

 試作品は、2023年度打ち上げ予定の「技術試験衛星9号機(ETS-9)」に搭載され、宇宙環境で動作が確認される予定。軌道上での動作確認の結果をもとに長期信頼性を改善し、小型化や低コスト化を並行して進め、製品化を目指す。

 今回の取り組みは、情報通信研究機構(NICT)の高度通信・放送研究開発委託研究「衛星搭載光通信用デバイスの国産化及び信頼性確保に関する研究開発」で実施された。

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