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アークエッジ・スペース、汎用バスを採用した衛星の軌道上運用を開始

2025.01.17 17:30

UchuBizスタッフ

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 アークエッジ・スペースは、2021年度から開発を進めてきた衛星汎用バス(大きさはW6U)を採用した衛星「AE1c」「AE1d」の2機の打ち上げが成功し、試験電波による通信確立で運用を開始した。1月15日に発表した。

 2機は、Space Exploration Technologies(SpaceX、スペースX)のロケット「Falcon 9」による相乗り(ライドシェア)ミッション「Transporter 12」で米国時間1月14日に打ち上げられた。日本時間1月15日午前4時9分にアークエッジ・スペースの牧之原地上局(静岡県牧之原市)で試験電波での通信を確認した。

 2機の衛星は、数カ月の初期運用を経てからそれぞれのミッション部に設定された成功判断基準(サクセスクライテリア)の達成を目指す。

 運用が開始された2機の衛星は、2021年度に経済産業省に採択され、2023年度以降は同省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業の一環として開発された。

(左から)AE1c、AE2d(出典:アークエッジ・スペース)
(左から)AE1c、AE2d(出典:アークエッジ・スペース)

 同社が開発した汎用バスは、内部の構造やコンポーネントがモジュール化、規格化されている。共通部分である衛星バス部とカスタマイズできるミッション部の接合部分に、柔軟に設計を変更できるというミッションインターフェース(MIF)を採用している。

 3U(10cm×10cm×30cm)の大きさであるミッション機器の搭載部を柔軟に載せ替えることで衛星開発にかかる費用や時間を最小限に抑えながらユーザーのニーズに応えた多様なミッションに対応できるとしている。

 アークエッジ・スペースは10kg級の標準汎用バスシステム、量産システム、複数衛星の自動運用システムを構築するととともに、2025年度までにこれらのシステムを利用した7機の衛星による多目的衛星コンステレーションを軌道上で実証する。

 今回の2機に先立って、「AE1b」(YODAKA)は国際宇宙ステーション(ISS)から軌道に放出され、現在軌道上で運用されている。AE1cとAE1dの運用開始で7機のうち3機の軌道上運用が開始となり、多様な軌道投入方法を利用できることが確認されたと同社は説明している。

 AE1cは汎用バスの「基本モデル」を採用。汎用バスシステムの基本機能と標準で搭載されるIoT通信機能に加え、3Uの縦型ミッション部を確保。ミッション部には、同社が展開するホステッドペイロードサービスを利用する企業のコンポーネントを搭載して、軌道上での実証を予定している。AE1bに続く2機目の基本モデルの軌道上運用で安定したホステッドペイロードサービスの展開に向けた運用、データ蓄積を進めていく。

 AE1dは汎用バスの「大型アンテナ搭載モデル」を利用して同モデルを実証する。同社が展開している、海洋向けの「VHFデータ交換システム(VHF Data Exchange System:VDES)」事業向けアンテナの実証、VDES受信機の要素技術実証を予定している。

 VDESは現行の船舶自動識別装置(Automatic Identificatin System:AIS)を高度化させたもの。衛星を活用して海上の船舶と双方向でデジタル通信できる次世代の海洋情報インフラとして期待されている。

 基本モデルや大型アンテナ搭載モデルを含めて4つのモデルがある。

 W6Uは、10cm×10cm×10cmの立方体を1Uとして規格化された小型衛星である「キューブサット」の種類であり、大きさは10cm×20cm×30cm。

4モデルの内容(出典:アークエッジ・スペース)
4モデルの内容(出典:アークエッジ・スペース)

関連情報
アークエッジ・スペースプレスリリース(PR TIMES)

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