ispace、第三者割当増資で最大237億円を調達へ--米機関投資家が引き受け

ニュース

ispace、第三者割当増資で最大237億円を調達へ–米機関投資家が引き受け

2024.10.11 20:05

田中好伸(編集部)

facebook X(旧Twitter) line

 民間月探査計画「HAKUTO-R」を進めるispace(東京都中央区)は10月11日、米機関投資家Heights Capital Managementが運用するファンドCVI Investments, Inc(CVI)を引受先とする第三者割当増資を発表した。調達額は最大237億円になる。Heights Capital Managementは世界最大という未公開金融コングロマリットSusquehanna Internationalグループに所属する。

 今回の第三者割当増資は、普通株式110万株(ベース増資)と新株予約権110万個(アップサイド増資)をCVIが引き受ける。2025年3月末まで4回に分けて発行する。10月11日、11月18日、2025年1月14日、同年3月11日が発行日。

 ベース増資となる普通株式は発行決議日の前日終値の90%で発行。各回の発行株式数は275万株(計1100万株)。第1回は10月11日、前日(10月10日)終値(668円)の90%である602円、第1回の普通株式での調達額は16億5555万円。

 アップサイド増資となる新株予約権は発行決議日の前日終値の120%を行使価額として発行。各回の発行個数は2万7500個(計11万個)。第1回は10月11日、前日終値(668円)の120%である802円が行使価額、1個あたり828円で発行。第1回の新株予約権での調達額は22億2827万円。

 第1回の発行となる10月11日で普通株式と新株予約権で計約39億円を調達した。10月28日時点での累計の調達額は695.2億円になる。

 普通株式で想定される調達総額は、10月10日終値ベースだと約66億円(上限額は101億円)。新株予約権で想定される調達総額は、10月10日終値ベースだと約89億円(上限額は136億円)。

 ispaceは10月11日に会見を開催。ispace取締役で最高財務責任者(CFO)を務める野崎順平氏は、今回の契約について普通株式と新株予約権の発行を4回に分けることで株価へのインパクトを軽減できると説明。普通株式の発行額が前日終値を参照することについても、潜在的に株価上昇を織り込むことで将来的な希薄化を抑制できるとメリットを解説している。

 野崎氏はまた、新株予約権の行使価格を全4回で前日終値の120%にすることで、株価が向上すれば、調達額にアップサイドが見込めることで将来成長を加速させることが期待できるとした。新株予約権の発行株式数は固定されていることから、最大交付株式数が限定されることから希薄化にも配慮できると解説した。

 普通株式で調達した資金(上限は101億円)については、ミッション3を主導する米子会社ispace technologies U.S.(ispace US)に投融資する。具体的には、ミッション3で活用する通信中継衛星2機の購入代金の一部として35億円、ミッション3「APEX 1.0」の月着陸船(ランダー)を打ち上げる、Space Exploration Technologies(SpaceX)の「Falcon 9」ロケットの打ち上げサービスの購入代金の一部として23億円、ランダーの製造費用の一部として43億円を活用する。

(出典:ispace)
(出典:ispace)

 新株式予約権については、Heights Capital Managementが全て行使した場合(上限は136億円)、2027年を予定しているミッション6(日本本社が主導)に必要な全資金を確保することを見込んでいる。

 ミッション6の打ち上げサービスの購入代金の一部やミッション6の間接費用として80億円、ispace USが主導するミッション4の開発に必要な部材の購入費として10億円、そのほかの運転資金として46億円(人件費に23億円、間接費に23億円)を活用する。

(出典:ispace)
(出典:ispace)

 ispaceは2027年までに合計3回のミッション打ち上げを予定している。具体的には、最速で2024年12月を予定しているミッション2、米子会社が主導し、2026年を予定しているミッション3、2027年を予定しているミッション6がある。

 今回の資金調達策で、これらのミッションの開発資金を確保できると同社は見込んでいる。商業的なミッションに向けて事業を進める上で重要な試金石となるミッション3とミッション6の開発資金を確保することは、中長期的な成長を裏打ちする重要な施策であり、今回の資金調達策の意義は極めて大きいとしている。

関連情報
ispaceプレスリリース
ispace適時開示

Related Articles