ispace米法人、月着陸で活用する通信中継衛星によるデータサービスを発表

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ispace米法人、月着陸で活用する通信中継衛星によるデータサービスを発表

2024.04.26 08:00

飯塚直田中好伸(編集部)

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 ispace(東京都中央区)は4月25日、米法人であるispace technologies U.S.(ispace US)が2機の通信中継衛星を活用した、新しいデータサービスを開始すると発表した。

 2機のリレー衛星は、月の南極付近に位置する「Schrödinger Basin(シュレーディンガー盆地)」に着陸する予定の月着陸船(ランダー)と地球の通信を中継する。

 ispaceは民間月探査プログラム「HAKUTO-R」を進めている。同社が単独で進めているHAKUTO-Rミッション2は10~12月に打ち上げる予定

 ミッション3では、ispace USが米Charles Stark Draper Laboratory(Draper、米マサチューセッツ州)を代表にした企業グループ「Team Draper」に参加し、Team Draperの一員として、ispaceがランダーの設計と製造、ミッション全体の運用などを担当する。

 Draperは、観測装置などの貨物(ペイロード)などの月までの輸送を米航空宇宙局(NASA)が民間企業に委託する「商業月面輸送サービス(CLPS)」をNASAと契約。Team Draperは、CLPSのタスクオーダー「CP-12」を担う(CP-12に搭載される装置はすでに決まっている)。

 CP-12としてTeam Draperは月着陸ミッション「APEX 1.0」を進め、ispaceはAPEX 1.0用としてランダーを設計、製造する。APEX 1.0はSpace Exploration Technologies(SpaceX)のロケット「Falcon 9」で打ち上げられる。打ち上げは2026年を予定している。

 2機の通信中継衛星は、CP-12の実現に向けて設計され、ランダーが月に着陸する前に月を周回する軌道に投入される計画となっている。

 CP-12の科学調査が完了した後、2機の通信中継衛星は極域を起点に月のほぼ全球をカバーする、円形に近い形で高高度で月の極軌道を周回する「高円極軌道(High Circular Polar Orbit:HCPO)」を航行する計画。7割近くの南極域と地球の間の通信が可能となり、より貴重なデータサービスの利用機会を顧客へと提供するという。

 APEX 1.0完了後も数年間、2機は月周回軌道上に留まる予定。月面や月を周回する軌道上でペイロードで収集されたデータを顧客に提供するだけでなく、データを処理、統合することで将来的な月ミッションの実現や強化への貢献を期待できるとしている。

 通信を中継する小型衛星2機の基盤となる衛星バスの設計と製造は、RTX(旧Raytheon Technologies)の子会社であるBlue Canyon Technologiesが担当する

 ispace USは現在、APEX 1.0と2機の通信中継衛星に載せるペイロードについて複数の民間企業や政府系機関、研究機関と継続的に商談しているという。すでに「測位や航法、タイミング(Positioning,Navigation and Timing:PNT)」情報に向けた技術実証などのペイロードの搭載が決定しており、新たに通信中継衛星の活用を希望する顧客との協議を開始したという。

(出典:ispace)
(出典:ispace)

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