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ispaceの「ミッション2」、最速12月に打ち上げ–月面着陸へ再挑戦

2024.09.12 10:58

小口貴宏(編集部)

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 民間月面探査ミッション「HAKUTO-R」を手掛ける日本のスタートアップ「ispace」は9月12日、2度目の打ち上げとなる「ミッション2」の月着陸機(ランダー)を最速で12月に打ち上げると発表した。

 ミッション1と同様に、米フロリダ州のケープカナベラルから、Space Exploration Technologies(SpaceX)の「Falcon9」ロケットで打ち上げる。打ち上げ後はミッション1と同様に省エネルギー軌道を使うため、月面への到着は打ち上げから4〜5カ月後となる。

 着陸地点は月の「氷の海」の中央付近をめざす。座標点は北緯60.5度、西経4.6度だ。

 なお、ispaceはミッション1でも月着陸に挑んだが、ランダーが月面に衝突する結果となった。ispaceで最高経営責任者(CEO)兼ファウンダーの袴田武史氏は「事前に設定した10段階のマイルストーンのうち8つを成功させ、また長期間にわたって深宇宙を航行したランダーを着陸直前まで姿勢制御できたことから、ハードウェアの信頼性を十分に実証できた」と述べた。

ispaceで最高経営責任者(CEO)兼ファウンダーの袴田武史氏

 また、ランダーが月面に衝突した原因について最高技術責任者(CTO)を務める氏家亮氏は「高度の測定はうまくいっていたが、測定したものを誤差と捉えるか、正しいものとして捉えるかに誤りがあった。(慣性計測装置で推定した高度)との差を縮小しようと取り組んだが間に合わず、月面に衝突した」と説明した。今回は、高度認識プログラムのパラメーターを改良して、着実な着陸に挑むという。

 さらにミッション2では、前回の欧州宇宙機関(ESA)の地上局に加えて、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の地上局も使えるようになった。そのため、ミッション1に比べてより着実な通信環境の維持が可能になると氏家氏は説明する。

月面で「水の電気分解」を実証へ

 今回のミッション2では、独自開発したランダー「RESILIENCE」(レジリエンス)の月面着陸をめざす。サイズは着陸脚を展開した状態で2mほどだという。着陸後はispaceのルクセンブルク法人が開発した探査車(ローバー)の「TENACIOUS」(テナシアス)を展開。月面の砂(レゴリス)をスコップですくい、その所有権を米航空宇宙局(NASA)に譲渡する取り組みも実施する。

 また、ispaceは月面への輸送サービスを主な事業としている。ミッション2では、高砂熱学の水電解装置を主要なペイロードとして搭載し、月面で「水の電気分解」を実証する。なお、水は地球から運ぶが、月面には水の存在が推定されている。現地の水を電気分解すれば酸素やロケット燃料を自給できると期待されている。

 このほか、複数のペイロードを搭載する。東京計器やバンダイ、ユーグレナのペイロードを搭載する。また、スウェーデンを拠点とするアーティストのムーンハウスとも提携し、ローバーには「小さな家」を模した作品を取り付ける。

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