ニュース
宇宙ゴミ除去衛星「アドラスJ」、対象デブリの後方数百mに距離を縮める
2024.04.23 11:00
宇宙ゴミ(スペースデブリ)の状況を調べるために打ち上げられた商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」が対象デブリの後方数百メートルに距離を縮めた。アストロスケールが4月22日に発表した。
ADRAS-Jを搭載したロケットは2月28日に打ち上げ、衛星は軌道に投入。2月22日から対象デブリに接近を開始。軌道投入時にはデブリと異なる軌道にあったADRAS-Jを、測位衛星の情報や地上からの観測値という絶対的な情報(絶対航法)で対象デブリと同じ軌道に調節している。
4月9日には、ADRAS-J搭載の可視光カメラ(VisCam)でデブリを捕捉、搭載されているセンサーを駆使して、デブリの“方角情報を活用する相対航法(Angles-Only Navigation:AON)”を開始。方角情報も活用しながら、相対軌道を制御して距離を詰め、デブリの後方数キロメールの距離で衛星搭載の赤外線カメラ(IRCam)でデブリを捕捉した。
4月16日にはIRCamで取得する、デブリの“形や姿勢などの情報による相対航法(Model Matching Navigation:MMN)”を開始。デブリの後方数百mへの接近に4月17日に成功した。今後はさらに接近し、デブリの状態や動きを把握するための撮影に移る。
アストロスケールは、デブリ除去などの技術実証を目指す宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「商業デブリ除去実証(Commercial Removal of Debris Demonstration:CRD2)」プロジェクトのフェーズ1の契約相手方として選定され、ADRAS-J(Active Debris Removal by Astroscale-Japan)を開発した。
今回のミッションは、2009年に打ち上げられたロケット「H-IIA」の第2段への「接近、近傍運用」(Rendezvous and Proximity Operations:RPO)を実証し、長期間放置された対象の運動や損傷、劣化といった状況を撮影する。
対象デブリであるH-IIA第2段は全長約11m、直径約4m、重量は約4t。今回のミッションの対象デブリは自らの位置情報を発信していない“非協力物体”。位置データや姿勢制御などの情報を得ることができない。
劣化や回転の具体的な状況など軌道上でのデブリの状態を把握しながら安全、確実にRPOを進めることは、デブリ除去を含む「軌道上サービス」を提供するための基盤になる。ADRAS-Jは実際のデブリに安全に接近し、デブリの状況を明確に調査する世界初の試みになる。ミッションの完了は5月中を予定している。
同社は、デブリ除去技術実証衛星「ELSA-d」(End-of-Life Services by Astroscale – demonstration)で摸擬デブリとの距離を1700kmから160mに縮めることに成功している。
関連情報
アストロスケールプレスリリース